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マキャベリの名言集 1469-1527

  • 執筆者の写真: 石田卓成
    石田卓成
  • 3月14日
  • 読了時間: 21分

更新日:10月2日

ニッコロ・マキャベリ


【統治論(君主について)】

1.「君主たるもの、愛されるよりも恐れられる方がはるかに安全である。」(君主論 第17章)

解説:理想は「愛され、かつ恐れられる」ことですが、もしどちらか一つしか選べないなら、「恐れられる」方がリーダーにとって安全だとマキャヴェッリは考えました。なぜなら、人々の愛情は気まぐれで、自分の利益のためなら簡単に裏切ることがあるからです。一方で、罰に対する恐怖はリーダーがコントロールしやすく、組織の秩序を保つ上でより確実な手段となります。これは、ただ怖がらせろという意味ではなく、国家の安定を最優先する現実的な考え方です。


2.「君主は、狐のように狡猾で、獅子のように獰猛でなければならない。」(君主論 第18章)

解説:リーダーは二つの動物の特性を持つべきだと彼は説きました。一つは「狐の賢さ」で、これによって陰謀や策略といった「罠」を見抜きます。もう一つは「獅子の力強さ」で、これによって敵という「狼」を圧倒します。力だけでは策略にはまり、賢いだけでは力に屈してしまうため、リーダーは状況に応じて賢さと力強さの両方を使い分ける必要がある、という実践的なアドバイスです。


3.「民衆は、見かけに騙されやすい。」(君主論 第18章)

解説:多くの人は、物事の本質よりも表面的なイメージや結果で判断しがちだとマキャヴェッリは指摘しました。そのため、リーダーは実際に全ての善い性質を持っている必要はなく、むしろ「慈悲深く、誠実であるように見える」ことが重要だと考えたのです。これは、政治の世界では、事実そのものよりも「人々からどう思われているか」というイメージが、支持を得る上で大きな力を持つという、現代にも通じるイメージ戦略の重要性を示しています。


4.「新しい君主は、特に、善行によってではなく、悪行によって権力を確立しなければならない場合がある。」(君主論 第8章)

解説:新しくリーダーになった人が権力を固める初期段階では、きれいごとだけでは済まない場面がある、とマキャヴェッリは述べました。特に社会が混乱している状況では、反対勢力を排除したり、基盤を安定させたりするために、通常は「悪いこと」とされる非情な手段(=悪行)を取らざるを得ない場合があるというのです。これは、理想論ではなく、国家の安定という目的を達成するための「必要悪」という考え方です。


5.「君主は、必要とあらば、悪徳と見なされることにも甘んじなければならない。」(君主論 第15章)

解説:国家を守り、安定させるという大きな目的のためには、リーダーは一般的な道徳観から外れることも覚悟しなければならない、という考えです。例えば、「ケチ」という評判は普通は悪いものですが、無駄遣いをせずに財政を健全に保つことで、結果的に民衆の負担を減らし国を守ることにつながります。このように、国家の利益のためなら、個人的な悪評を恐れてはならないと彼は説きました。


6.「君主は、憎悪を避けるように努めなければならない。」(君主論 第19章)

解説:マキャヴェッリは、「恐れられること」と「憎まれること」は全く違うと強調しました。「恐れ」は秩序を保つために有効な場合がありますが、「憎しみ」は反乱や陰謀の原因となり、リーダーの地位を最も危険にさらします。特に、人々の財産を奪ったり、家族に手を出したりする行為は、強い憎悪を生むため絶対に避けるべきだと警告しています。リーダーは恐怖で人を動かすことはあっても、決して人々の恨みを買ってはいけないのです。


7.「君主は、偉大な事業を成し遂げ、自らの力量を示すことで、尊敬を集めることができる。」(君主論 第21章)

解説:リーダーは、戦争での勝利や大規模な公共事業といった、目に見える大きな成果を上げることで、人々の尊敬と支持を集めることができる、という考えです。大きなプロジェクトを成功させることで、「このリーダーは有能だ」と人々に印象づけ、その権威を高めることができます。現代の政治家が経済成長やインフラ整備をアピールするのも、この考え方に通じます。


8.「君主は、常に変化する状況に適応しなければならない。」(君主論 第25章)

解説:時代や状況は常に変化していくものなので、リーダーもそれに応じてやり方や戦略を柔軟に変えていかなければならない、とマキャヴェッリは考えました。過去の成功体験に固執していると、新しい状況に対応できずに失敗してしまいます。成功し続けるリーダーには、時代の流れを読む力と、変化に対応できる柔軟性が不可欠なのです。


9.「君主は、約束を守ることよりも、約束を破ることが有利になる場合がある。」(君主論 第18章)

解説:国家の利益が何よりも優先されるため、もし約束を守ることが国にとって不利益になるなら、その約束は破っても構わない、というのがマキャヴェッリの冷徹な考えです。なぜなら、政治の世界では相手も同じように裏切る可能性があるからです。自分だけが正直に約束を守るのは、かえって危険だと彼は指摘しました。ただし、当然ながら、これには信頼を失うという大きなリスクが伴います。


10.「君主は、残酷さを適切に用いるべきである。」(君主論 第8章)

解説:残酷な手段や暴力は、国家の秩序を保つためにやむを得ず使う場合があるとしても、その使い方には厳格なルールがあるべきだと彼は説きました。具体的には、「一度に、一気に」行い、その後は二度と繰り返さないことです。そして、厳しい措置のあとには、すぐに人々に恩恵を与える政策に切り替えるべきだと強調しました。ダラダラと残酷なことを続けると、人々の憎しみを買うだけで逆効果になるからです。


11.「君主は、中立を保つよりも、明確な立場を示し、味方か敵かを明らかにすべきである。」(君主論 第21章)

解説:二つの勢力が争っているときに、どちらにもつかずに中立を保つのは、最も危険な選択だとマキャヴェッリは考えました。なぜなら、勝った方からは「味方しなかった」と疑われ、負けた方からは「助けてくれなかった」と恨まれ、結局どちらからも敵視されて孤立してしまうからです。どちらかの味方につくことで、たとえリスクはあっても、自分の立場をはっきりさせ、信頼できる関係を築くことができると彼は説きました。


12.「君主は、自らの運命を他人に委ねてはならない。」(君主論 全般)

解説:これはマキャヴェッリの思想の根幹をなす考え方です。運の良さや他人の助けといった不確実なものに頼るのではなく、自分自身の能力や努力(マキャヴェッリの言葉で「力量(ヴィルトゥ)」)によって道を切り開くべきだと彼は主張しました。自分の国や組織の運命は、他人任せにせず、自分の手でコントロールするべきだという強い自立の精神を示しています。


13.「君主は、人々が自分に依存するように仕向けるべきである。」(君主論 第9章)

解説:リーダーは、人々が「このリーダーがいなければ自分たちの生活は成り立たない」と感じるような状況を作り出すべきだ、という権力維持のテクニックです。人々がリーダーの存在を必要不可欠だと感じるようになれば、特に社会が不安定な困難な時期においても、彼らの忠誠心と支持を確保しやすくなる、とマキャヴェッリは考えました。


14.「君主は、自らが創り出した秩序を守るために戦わねばならない。」(君主論 第6章)

解説:新しい法律や社会の仕組みを作るだけでは不十分で、その新しい秩序を守り抜くための「力」が必要だと彼は説きました。どんな改革にも、古い制度から利益を得ていた人々からの反対が必ず起こります。その抵抗を乗り越え、改革を定着させるための実力と覚悟がなければ、新しい秩序はすぐに崩されてしまうという現実的な指摘です。


【統治論(共和国について)】

15.「共和国は、自由な市民によって支えられる。」(リウィウス論 第1巻)

解説:共和国(現代の民主主義国家に近いもの)が強く安定するためには、市民が「お客様」でいてはダメだとマキャヴェッリは考えました。市民一人ひとりが国の主役であるという意識を持ち、政治に積極的に参加し、国を支えていく責任感を持つこと。それこそが、健全な国家の土台になるのです。


16.「腐敗した共和国は、容易に外敵の餌食となる。」(リウィウス論 第1, 3巻)

解説:ここで言う「腐敗」とは、単にお金に関する汚職だけを指すのではありません。市民が国全体の利益(公共の利益)よりも、自分のことばかり考えるようになる精神的な状態のことです。国がこのように内側から弱ってしまうと、団結力がなくなり、外からの攻撃に対して非常に脆くなってしまう、という警告です。


17.「民衆は、貴族よりも正しい判断を下す場合があるが、指導者がこれを導かねばならない。」(リウィウス論 第1巻58章)

解説:マキャヴェッリは意外にも、一部のエリート(貴族)よりも、一般の人々(民衆)の方が、物事の全体を見て正しい判断をすることが多いと考えていました。しかし、民衆の判断は感情やその場の雰囲気に流されやすい弱点もあります。そのため、優れたリーダーが、民衆の持つエネルギーや知恵を正しい方向に導いていくことが重要だと説きました。


18.「自由を愛する民衆は、支配を望む者よりも強い。」(リウィウス論 第2巻2章)

解説:独裁者に無理やり従わされている兵士よりも、「自分たちの国を守る」という意識を持って、自由のために戦う市民の方がはるかに強い、とマキャヴェッリは古代ローマの歴史から学びました。市民が主体的に国に関わることが、国家の本当の強さの源泉になるという考え方です。


19.「国家は、内部の分裂によって滅びることが多い。」(フィレンツェ史 第7巻序文)

解説:国が滅びる最大の原因は、外国からの攻撃よりも、国内での対立や分裂(内輪もめ)にあると彼は指摘しました。内部の争いは国全体の力を弱め、経済や外交、防衛といったあらゆる面で国を脆弱にしてしまいます。現代社会が抱える政治的な対立や経済格差といった問題にも通じる、時代を超えた警告です。


20.「自由な国家では、市民が互いに監視し合う。」(リウィウス論 第1巻7章)

解説:権力者が暴走したり、不正を働いたりしないように、自由な国家では市民がお互いの行動や政治の動きをチェックし合う仕組みが重要だという考えです。現代で言えば、報道の自由、情報公開制度、そして選挙などがその役割を担っています。市民による権力の監視が、自由を守るために不可欠なのです。


21.「国家は小さな誤りでは滅びないが、内部の腐敗が広がれば崩壊を免れない。」(リウィウス論 第3巻)

解説:国の運営において多少の失敗はつきものですが、それだけで国が滅びることはありません。本当に危険なのは、リーダーや市民が私利私欲に走り、社会全体の倫理観が失われる「内部の腐敗」だと彼は警告しました。国は外からの攻撃よりも、内側から崩れていくことの方が多いのです。


22.「民衆は、指導者がいないと混乱するが、賢明な指導者がいれば偉業を成す。」(リウィウス論 第1巻58章)

解説:民衆は大きな可能性を秘めたエネルギーの塊のようなものですが、それだけでは方向性が定まらず、混乱したり、悪い方向に扇動されたりする危険があります。しかし、賢明なリーダーがそのエネルギーを一つの目標に向かってまとめ上げれば、国を守ったり、社会を豊かにしたりといった、偉大なことを成し遂げられるとマキャヴェッリは考えました。


23.「自由は、市民が不断の努力と責任を負うことによってのみ守られる。」(リウィウス論 全般)

解説:私たちが享受している「自由」は、当たり前のようにそこにあるものではない、とマキャヴェッリは教えています。それは、誰かが与えてくれるものではなく、市民一人ひとりが政治に関心を持ち、「自分たちの手で守り続ける」という努力と責任感があって初めて維持できる、壊れやすいものなのです。


24.「民衆は、正義を求めるが、しばしばそれを見誤る。」(リウィウス論 全般)

解説:人々は基本的に「正しいこと(正義)」を求めますが、感情やその場の雰囲気に流されて、何が本当に正しいのかを見誤ってしまうことがある、と彼は指摘しました。そのためリーダーは、短期的な民衆の人気取り(ポピュリズム)に走るのではなく、長期的な視点で国家にとって本当に利益になることは何かを冷静に判断すべきだと説いています。


25.「偉大な国家は、内部の対立を乗り越えることで強くなる。」(リウィウス論 第1巻4章)

解説:一般的には、国内の対立は悪いことだと考えられがちです。しかしマキャヴェッリは、古代ローマの歴史を分析し、貴族と平民の対立といった内部の緊張関係が、かえって健全な議論やより良い法律を生み出し、結果として国を強くした、というユニークな見方をしました。対立を無理に抑え込むのではなく、それをバネに成長することが重要だというのです。


【戦争論】

26.「賢明な君主は、平時においても、戦争の準備を怠ってはならない。」(君主論 第14章)

解説:「備えあれば憂いなし」ということわざのように、平和で何事もない時にこそ、万が一の危機に備えて準備をしておくべきだ、という教えです。これは軍事的な意味だけでなく、自然災害への備えや、企業の危機管理、個人の将来設計など、あらゆることに応用できる普遍的な知恵と言えるでしょう。


27.「君主は、自らの軍隊を持つべきである。」(君主論 第12-14章)

解説:マキャヴェッリの時代、イタリアの多くの都市国家は、お金で雇った兵士(傭兵)に国防を任せていました。しかし彼は、傭兵は忠誠心がなく、いざという時に裏切る危険な存在だと強く批判しました。国を守るという最も重要な仕事は、その国に住み、国を愛する市民自身が行うべきだ、というのが彼の揺るぎない信念でした。


28.「戦争は国家の存続のために避けられぬ手段である。」(リウィウス論 全般)

解説:マキャヴェッリは戦争を好んでいたわけではありません。しかし、理想やきれいごとだけでは国を守れない厳しい現実があることも知っていました。そのため、国家の独立や国民の安全を守るためには、最終手段として戦争もやむを得ない「必要悪」である、という現実主義的な考え方を持っていました。


29.「軍隊は、規律正しく訓練されていなければならない。」(戦争の技術 第2巻)

解説:強い軍隊を作るために必要なのは、兵士一人ひとりの勇気だけでなく、組織全体の厳格な規律と連携だと彼は考えました。厳しい訓練によって兵士の技術を高め、明確な命令系統によって組織を一つにまとめることで、軍隊は個人の力の総和をはるかに超える強さを発揮できるのです。


30.「武器を持たない預言者は、必ず滅びる。」(君主論 第6章)

解説:どんなに素晴らしい理想やビジョン(預言)を掲げても、それを実現し、反対者から守るための実力(武器)がなければ、結局は失敗に終わってしまう、という厳しい現実を指摘した言葉です。社会を変えるには、理想論だけでなく、それを実行するための現実的な力も必要なのです。


31.「戦争は、避けるよりも準備する方が賢明である。」(戦争の技術)

解説:戦争が起こらないことをただ願っているだけでは、国を守ることはできない。いつ起こるかもしれない最悪の事態を想定し、それに備えておくことこそが、リーダーのとるべき賢明な態度だと彼は考えました。これは現代の危機管理(リスクマネジメント)の考え方にも通じる重要な指摘です。


32.「戦争において最も重要なのは、迅速さである。」(戦争の技術)

解説:戦いにおいては、決断や行動が遅れることは致命的です。ぐずぐずしている間にチャンスを逃したり、敵に先手を取られたりしてしまいます。敵の意表を突き、主導権を握るためには、スピードが何よりも重要だとマキャヴェッリは強調しました。


33.「将軍は、敵の意図を読み、それを逆手に取る者でなければならない。」(戦争の技術)

解説:優れた指揮官は、ただ力が強いだけでなく、相手が何を考えているか、次にどう動くかを予測し、その裏をかく戦略を立てられる人物であるべきです。これは戦争だけでなく、現代のビジネス交渉やスポーツの試合など、あらゆる競争において勝利の鍵となる考え方です。


34.「軍隊の強さは、数ではなく、結束と訓練にある。」(戦争の技術)

解説:ただ人数が多いだけのまとまりのない集団(烏合の衆)よりも、たとえ人数は少なくても、よく訓練され、固い絆で結ばれたチームの方がはるかに強い、と彼は考えました。これは、現代の組織論における「量より質」の重要性を示すものと言えます。


35.「戦争は、敵を排除し、国家に平和と秩序をもたらす手段である。」(戦争の技術)

解説:マキャヴェッリにとって、戦争は破壊そのものが目的ではありません。戦争という手段を用いて、国を脅かす敵を取り除き、その先にある、より安定した平和な状態を作り出すことこそが、戦争の究極的な目的なのです。いわば、より良い未来のための「荒療治」として戦争を捉えていました。


36.「戦争は、敵の計画を崩すことから始まる。」(戦争の技術)

解説:戦いに勝つための第一歩は、相手の戦略や計画を無力化することだと彼は考えました。相手がやろうとしていることを事前に察知し、それを妨害することで、戦いを有利に進めることができます。力と力がぶつかり合う前に、情報戦や心理戦で相手の計画を崩すことが重要なのです。


37.「軍事力なき国家は、他者に支配される運命にある。」(君主論, 戦争の技術)

解説:自分の国を自分で守る力(軍事力)を持たない国家は、結局、他の強い国に言いなりになるしかない、という国際社会の厳しい現実を指摘した言葉です。国家の独立と自由を保つためには、自衛のための力が不可欠であると彼は説きました。


38.「戦争は、準備不足の者に勝利を与えない。」(戦争の技術)

解説:戦争であれ、スポーツの試合であれ、あるいは試験であれ、成功や勝利という結果は、事前にどれだけ入念な準備をしたかで決まる、とマキャヴェッリは考えていました。付け焼き刃の知識や訓練では、厳しい現実の世界では通用しないという、準備の重要性を強調する教訓です。


【人間論】

39.「人間は、本質的に利己的である。」(君主論, リウィウス論)

解説:マキャヴェッリは、人間は基本的に「性善説」ではなく「性悪説」に近い、つまり自分の利益を最優先に行動する利己的な存在だと考えていました。彼は、理想論で政治を語るのではなく、そうした人間の本性を前提として、どうすれば社会の秩序を保てるかを考えました。リーダーは、人々の利己的な側面を理解した上で、対策を講じるべきだと説いたのです。


40.「裏切り者は成功後も不安定である。」(君主論 全般)

解説:裏切りによって一時的に成功を手に入れたとしても、その人の立場は決して安定しない、とマキャヴェッリは示唆しました。なぜなら、一度裏切った人間は周りから信用されず、「いつか自分も裏切られるのではないか」という疑念を常に持たれるからです。また、本人も報復を恐れ、心の安らぎを得ることはできません。真の安定は、信頼関係の上にしか築かれないのです。


41.「人は父親の死はすぐに忘れるが、財産の喪失はなかなか忘れない。」(君主論 第17章)

解説:これは、人間が精神的な悲しみよりも、物質的な損失に対して、より強く、長く記憶に留める傾向があることを指摘した、非常に有名な一節です。この人間の本質を理解しているからこそ、マキャヴェッリは君主に対して「民衆の財産には絶対に手を出すな」と強く警告しました。財産を奪うことは、人々の最も深い恨みを買い、政権を揺るがす原因になるからです。


42.「人間は常に不満を抱き、新たな秩序や利益を求めるゆえに、社会は変動する。」(リウィウス論 第1巻37章)

解説:人間は現状に完全に満足することがなく、常により良い状況を求める生き物です。この尽きることのない欲望や不満こそが、社会を変化させ、歴史を動かしていく原動力だとマキャヴェッリは捉えました。このエネルギーは社会の進歩につながる一方で、不安定さの原因にもなるため、リーダーは人々の不満をうまく管理し、社会の安定を保つ手腕が求められます。


43.「民衆は、不安定な状況下では、自由よりも秩序と安全を欲する。」(リウィウス論 全般)

解説:平和な時には「もっと自由が欲しい」と考える人々も、社会が混乱し、自分たちの生活の安全が脅かされるような状況になると、自由よりもまず、安定した秩序と安全を求めるようになる、という人間の心理を指摘しています。現代でも、大きな災害やテロ事件が起こると、個人の自由がある程度制限されても、より強力な治安維持を求める声が大きくなることがあります。


44.「人間は、変化を嫌い、新しいことを受け入れるのに時間がかかる。」(君主論 第6章)

解説:人間は本能的に保守的で、慣れ親しんだものを好み、急激な変化や未知のものを警戒する傾向があります。そのため、リーダーが新しい制度や政策を導入しようとしても、すぐには受け入れられず、抵抗に遭うことが多いとマキャヴェッリは指摘しました。改革を進めるには、人々の抵抗を予測し、時間をかけて丁寧に説明し、理解を求めていく粘り強さが必要なのです。


【運命論】

45.「成功は、運命と実力が結びつくことによって生まれる。」(君主論 第25章)

解説:成功するためには、実力(マキャヴェッリの言葉で「力量」)と、自分ではコントロールできない時代の流れや偶然(「運命」)の両方が必要だと彼は考えました。どんなに実力があっても、運に見放されれば成功は難しく、逆に、絶好のチャンスが訪れても、それを掴む実力がなければ意味がありません。成功とは、この二つがうまく噛み合った時に生まれるのです。


46.「運命は、時勢に備え、行動する者に味方する。」(君主論 第25章)

解説:幸運は、ただ待っている人のところにはやって来ない、とマキャヴェッリは言います。彼は「運命」を気まぐれな女神にたとえ、その女神は、ただ祈っている人よりも、時代の変化を敏感に察知し、万全の準備をして、果敢に行動する人を好むと考えました。チャンスを掴むためには、日々の備えと、いざという時に行動を起こす勇気が不可欠なのです。


47.「運命は、時として手加減しない。」(君主論 第25章)

解説:人生には、自分の努力だけではどうにもならない、予測不可能な災難や逆境が容赦なく襲いかかってくることがある、と彼は認めました。しかし、マキャヴェッリは、そんな運命の非情さに打ちのめされるのではなく、人間が持つ知恵や勇気を最大限に発揮して、その困難に立ち向かうべきだと主張しました。運命の厳しさを知りつつも、決して諦めないことの重要性を説いています。


48.「運命は激しく変わる。君主はその流れに抗うため、必要なら強硬に行動すべきだ。」(君主論 第25章)

解説:時代の流れや状況(運命)は、川の流れのように常に変化し、時には荒れ狂うこともあります。優れたリーダーは、その流れにただ流されるのではなく、自らの強い意志と能力で、時には流れに逆らってでも進むべきだと彼は考えました。状況を打開するためには、断固とした決断と、強硬な手段も必要になるという、強いリーダーシップの必要性を示しています。


【歴史論】

49.「歴史は、未来を予測するための最良の教師である。」(リウィウス論 序文)

解説:マキャヴェッリにとって、歴史は単なる過去の出来事の記録ではありませんでした。彼は、過去の成功や失敗の中に、時代を超えて通用する普遍的なパターンや教訓があると考え、歴史を学ぶことで、未来に起こりうることを予測し、より良い判断を下すことができると信じていました。「歴史は繰り返す」と言われるように、過去から学ぶことの重要性を説いた言葉です。


50.「賢者は、歴史に記された他者の過ちから学び、自らの行動を正す。」(リウィウス論 序文)

解説:最も賢い学び方とは、自分で痛い思いをして失敗から学ぶのではなく、歴史上の人物が犯した過ちから教訓を得て、同じ失敗を避けることだと彼は考えました。歴史は、先人たちの無数の失敗例が詰まった「最高の教科書」であり、それを学ぶことで、私たちはより賢明に行動することができるのです。


51.「歴史は、人間が同じ欲望と過ちを繰り返す姿を示す記録である。」(フィレンツェ史 全般)

解説:歴史を深く学ぶと、時代や場所が違っても、人間は結局同じような欲望に動かされ、同じような過ちを繰り返していることに気づかされる、とマキャヴェッリは述べました。この言葉には、歴史から学ぶことの重要性を訴えつつも、人間の本質はなかなか変わらないという、彼の現実主義者としての一種の諦めのような響きも感じられます。


52.「過去の栄光にすがる者は、現在の怠慢によって衰退を招く。」(フィレンツェ史 全般)

解説:過去の成功体験にいつまでも満足し、「昔は良かった」とばかり言っている組織や個人は、やがて衰退していく、という厳しい指摘です。時代は常に変化しており、昨日までの成功法則が明日も通用するとは限りません。繁栄を続けるためには、過去の栄光に安住するのではなく、常に未来を見据えて挑戦し続ける姿勢が不可欠なのです。


【その他】

53.「私は貧しさの中で生き、運命に笑いかける。」(1513年12月10日 フランチェスコ・ヴェットーリ宛書簡)

解説:この言葉は、政治の世界から追放され、不遇な生活を送っていたマキャヴェッリが友人に宛てた手紙の一節です。彼は、自分の不幸な運命を嘆くのではなく、むしろ「笑い飛ばしてやる」かのような、皮肉とユーモアを交えた強い精神力を見せています。どんな逆境にあってもプライドを失わず、困難な状況さえも冷静に受け止める彼の強靭な人間性が表れています。


54.「宗教は、国家の秩序を保つために利用されるべきである。」(リウィウス論 第1巻11-15章)

解説:マキャヴェッリは、宗教そのものの教えが正しいかどうかということよりも、宗教が社会に与える「効果」に注目しました。古代ローマでは、宗教が人々の道徳心を高め、社会のルールを守らせ、国を一つにまとめる上で非常に有効な「道具」として機能したと分析しました。彼は、リーダーは宗教の持つ力を理解し、国家統治のために戦略的に利用すべきだと考えたのです。


55.「権力は、民衆の支持を失えば、維持できず崩壊する。」(君主論, フィレンツェ史)

解説:どんなに強大な権力者であっても、その力の源泉は最終的には民衆の支持にある、とマキャヴェッリは喝破しました。武力や策略だけで人々を支配し続けることはできず、民衆の支持や信頼を失ってしまえば、その権力基盤は内側から崩れてしまいます。リーダーは常に民衆の声に耳を傾け、その支持を得る努力を怠ってはならないのです。

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