ド・ゴールの名言集 1890-1970
- 石田卓成

- 3月11日
- 読了時間: 20分
更新日:10月3日
シャルル・ド・ゴール
1.「独立とは、他者に依存しない選択である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: この言葉はド・ゴールの国家観を要約したものです。彼にとって「独立」とは、冷戦時代のアメリカやソ連のような超大国に頼ることなく、フランスが自らの国益と歴史的使命に基づいて行動する権利と能力を意味しました。この考えは、フランス独自の核兵器開発やNATOの軍事機構からの脱退といった、彼の具体的な政策に貫かれています。
2.「歴史は、待つ者には何も与えない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: これは、ド・ゴールの行動的な歴史観を凝縮した言葉です。彼は、歴史は運命によって決まるのではなく、優れた個人の強い意志と行動によって作られると信じていました。1940年にフランスがナチス・ドイツに降伏した絶望的な状況で、彼は「待つ」ことをせず、自らロンドンで抵抗運動を組織しました。
3.「未来は、予測するものではなく、作り上げるものだ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: ド・ゴール自身の言葉ではありませんが、彼の行動哲学の核心を見事に捉えています。彼は、未来をただ待ったり予測したりするのではなく、国家の強い意志をもって積極的に「作り上げる」べきだと考えていました。戦後のフランス経済を近代化させた経済計画は、まさにこの思想を形にしたものでした。
4.「自由は、戦わなければ得られない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: この言葉は、ド・ゴールの行動と信念を象徴しています。1940年にフランス政府が降伏したとき、彼は自由が「与えられる」ものではなく、失われれば「戦って」取り戻さなければならないと考え、自由フランス運動を創設しました。彼にとって自由とは、国家の独立と分かちがたく結びついていました。
5.「平和は、強さによってのみ守られる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: この言葉は、ド・ゴールの現実主義的な安全保障観を表しています。彼は、平和が理想論だけで守られるとは考えず、国家の安全は自らの「強さ」、つまり強力な防衛力によってのみ保証されると信じていました。この信念に基づき、彼は他国に依存しないフランス独自の核兵器開発を推し進めました。
6.「希望とは、絶望の中にあっても行動を起こす勇気である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: ド・ゴールにとって「希望」とは、楽観的な感情ではなく、絶望的な現実を前にしても行動を選ぶ「勇気」でした。1940年にフランスが敗北した暗黒の時代に、彼は行動によって「抵抗の炎」を灯し、それ自体を希望の象徴としました。
7.「自由は、与えられるものではなく、奪い取るものだ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 自由に対するド・ゴールの闘争的な姿勢をより強く表した言葉です。自由フランス運動は、まさにナチス・ドイツに失われた自由を「奪い取る」ための戦いでした。この精神は、戦後、フランスの独立と主権を脅かすいかなる圧力にも屈しないという、彼の断固たる外交姿勢の基盤となりました。
8.「偉大な国に友人はいない。人間は友人を持つことができるが、政治家はそうはいかない。」(1967年12月9日、雑誌『パリ・マッチ』のインタビュー)
解説: 「国家に友人はいない」という言葉は他人のものですが、ド・ゴール自身はこのように語りました。これは、国家の指導者は個人的な友情や感情に流されることなく、ただひたすら国益(国家の利益)にのみ奉仕すべきであるという、指導者の厳しい責任感と孤独を強調した言葉です。
9.「フランスは戦闘には負けたが、まだ戦争に負けた訳ではない。」(1940年8月3日のポスター「すべてのフランス国民へ」) 解説: この有名なスローガンは、一般に信じられている1940年6月18日のラジオ演説ではなく、同年8月にロンドンの壁に貼られたポスターの言葉です 。フランスの敗北が現実となった状況で、この言葉は「一つの戦闘」の敗北と「戦争全体」を区別し、抵抗を続ける決意を力強く宣言しました。
10.「偉人なくして偉業はない。そして偉大になろうと決意した人物だけが偉人となるのだ。」(剣の刃)
解説: 1932年の著作『剣の刃』の結論部分を飾る一文です 。彼は、歴史を動かすのは、偉業を成し遂げようとする強い意志を持った非凡な個人であると主張しました。彼にとって「偉大さ」とは、生まれつきの才能ではなく、自らの意志で選び取り、努力を通じて獲得するものだと考えていました。
11.「フランスの剣を振るうべき義務を負っていた者たちが、それを折れたまま投げ捨てたから、私がその剣の折れた残骸を拾い上げたのだ。」(1940年7月13日のBBCラジオ演説)
解説: 1940年の降伏後、ロンドンからのラジオ演説で語られた不屈の決意です 。「剣」はフランス国家の主権と名誉を象徴します。彼は、降伏したフランス政府がその剣を「投げ捨てた」以上、たとえそれが「折れた残骸」でも、自分が拾い上げて戦い続けることがフランスの正統性を受け継ぐことだと宣言しました。
12.「出来事に直面したとき、人格ある人間は自分自身に頼る。彼の衝動は、行動に自らの刻印を押し付け、それを引き受け、自らの仕事とすることである。」(剣の刃)
解説: 著作『剣の刃』で語られた、彼のリーダーシップ論の核心です 。真の指導者とは、危機に際して規則や命令に隠れるのではなく、自らの判断と責任で決断し、行動する人物であると定義しました。1940年の彼の孤独な決断は、まさにこの哲学の実践でした。
13.「主導権を決して手放してはいけない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 著作『剣の刃』で展開される戦略思想に基づく言葉です。軍事でも政治でも、指導者は常に状況をコントロールし、自らが主導権を握り続けることが不可欠だと彼は考えていました。
14.「歴史は決して終わりを迎えない。それは常に進行中であり、未来を形作る。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の歴史観を要約した言葉です。ド・ゴールは、歴史を単なる過去の記録ではなく、現在と未来に影響を与え続ける生きた力と捉えていました。過去の教訓から学び、未来を構想することが重要だと考えていたのです。
15.「沈黙ほど権威を高めるものはない。それは強者の輝きであり、弱者の避難所である。」(剣の刃)
解説: 著作『剣の刃』で、指導者の権威について述べた言葉です 。彼は、多くを語らず沈黙を保つことが、かえって指導者の威厳や権威を高めると考えていました。彼自身、政治的な駆け引きの中で、この「沈黙の力」を効果的に利用しました。
16.「私は運命を信じない。私はフランスを信じる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の著作全体を貫く信念を表す言葉です。彼は、歴史が運命によって決められているとは考えず、フランスという国家の永続性と、そこに尽くす人間の意志の力を信じていました。
17.「フランスは、私が彼女を失うことのないように、私を必要としている。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼が自分自身とフランスの運命を一体のものと見なしていたことを示す言葉です。彼は、フランスという国家に奉仕することに強い使命感を抱いており、自分がフランスにとって不可欠な存在であると自負していました。
18.「私は右派の支持者でも左派の支持者でもない、私はフランスのためにいる。」(1965年12月15日のテレビインタビュー)
解説: 大統領選挙の際のインタビューで語られた言葉です 。彼は、特定の政党や派閥の利益(右派・左派)に立つのではなく、常にフランス国家全体の利益を最優先する指導者であるという立場を明確にしました。
19.「自由とは、自らを支配する権利である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 国家主権の思想を簡潔に表した言葉です。彼にとって、個人だけでなく、国家が他国からの干渉を受けずに自らの運命を決定する権利(自決権)を持つことこそが、真の「自由」であると考えていました。
20.「人間は、自分が信じるものによってのみ生きられる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 信念と行動の一致を重んじた彼の生き方を反映した言葉です。特に困難な状況において、強い信念を持つことが人間を支え、行動へと駆り立てる原動力になると彼は信じていました。
21.「国民は指導者に従うが、それは指導者が国民の意志を体現している場合に限る。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の政治スタイルを要約した言葉です。彼は、国民の支持こそが指導者の正当性の源泉だと考えていました。そのため、大統領の重要な政策について国民に直接意見を問う「国民投票」を重視しました。
22.「私は決して諦めない。なぜなら、フランスが決して諦めないからだ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼が自身とフランス国民の精神を同一視していたことを示す言葉です。フランス国民が持つ不屈の精神が、自分自身の諦めない心の源泉であると語り、国民との一体感を強調しました。
23.「私が為したことは、私が消え去った後、遅かれ早かれ、新たな情熱の源となるだろう。」(戦争回顧録)
解説: 『戦争回顧録』の結びにある一節の意訳です 。彼は、自分の死後も、自身が成し遂げたこと(フランスの解放や再生)が、未来のフランス国民にとって新たな希望や行動のきっかけになると信じていました。
24.「すべてのフランス人は、私の一部であり、私はすべてのフランス人の一部である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 国民との深い一体感を表現した言葉です。彼は、自分がフランス国民全体の代表であり、国民一人ひとりと運命を共にしているという強い意識を持っていました。これは、指導者としての彼の責任感の表れでもあります。
25.「権威は威厳なくしては成り立たず、威厳は距離なくしては成り立たない。」(剣の刃)
解説: 『剣の刃』からの引用で、指導者がなぜ孤高になりがちかを説明しています 。彼は、指導者が人々から尊敬される「権威」を持つためには、ある種の「威厳」が必要であり、その威厳は、部下や大衆と一定の「距離」を保つことによって生まれる、と考えました。
26.「行動は、思考を現実にする唯一の手段である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の行動主義的な哲学を表す言葉です。彼は、ただ考えるだけ、計画するだけでは不十分で、実際に行動に移して初めて物事は実現すると考えていました。思考と行動の結びつきを非常に重視していました。
27.「人間は情熱によってのみ動かされる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 『剣の刃』で論じられている思想です。彼は、指導者が人々を動かすためには、冷徹な理性だけでなく、人々を鼓舞し、奮い立たせるような「情熱」が不可欠であると考えていました。
28.「私はフランスの道具であり、運命である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼が自らを、フランスの歴史的な運命を実現するための「道具」と見なしていたことを示す言葉です。そこには、国家への完全な献身と、自らが歴史を動かす中心人物であるという強烈な自負が込められています。
29.「団結は力であり、分裂は死である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の政治信条を要約した言葉です。彼は、フランスが歴史的に弱体化した原因は、常に国内の「分裂」にあると考えていました。そのため、第二次世界大戦中も大統領としても、国民の団結を強く訴え続けました。
30.「フランスの偉大さは、彼女が試練を乗り越えるたびに輝く。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼のフランスに対する深い愛情と信頼を示す言葉です。彼は、フランスという国は、戦争や危機といった厳しい「試練」に直面し、それを克服するたびに、その真の偉大さを発揮すると信じていました。
31.「過去は教訓であり、未来は希望である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 歴史から学びつつも、常に未来を見据えていた彼の姿勢を示す言葉です。過去の失敗を繰り返さないための「教訓」として歴史を尊重し、それを土台としてより良い「希望」ある未来を築くべきだと考えていました。
32.「国家とは、永遠に続く意志である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の国家観を表す言葉です。彼にとって国家とは、単なる政府や制度ではなく、世代を超えて受け継がれる国民の集合的な「意志」であり、歴史を通じて続く有機的な存在でした。
33.「私はフランスの声であり、彼女の魂である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼とフランスとの一体感を最も強く表現した言葉の一つです。特に第二次世界大戦中、降伏した政府とは別に、彼自身がフランスの正当な「声」であり、その精神(魂)を体現しているのだという強い信念を持っていました。
34.「民主主義とは、私にとって、国民の主権と完全に一致する。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の民主主義観を明確に示す言葉です 。彼にとって民主主義とは、国民が自らの国の運命を決める力(主権)を持つことであり、その最も直接的な表現が、国民投票であると考えていました。
35.「国家は、その国民が夢見る高さに応じて上昇する。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 国民の志の高さが国家の未来を決めるとする彼の考えを示す言葉です。国民一人ひとりが高い理想や「夢」を持つことが、国全体をより偉大な方向へと導く力になると信じ、国民を鼓舞しました。
36.「国家の偉大さは、その国民がどれだけ高く志すかにかかっている。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 前の項目(35)とほぼ同じ意味で、国民の意志や志が国家の格を決定するという彼の信念を強調しています。国の将来は政府だけでなく、国民全体の心構えにかかっていると訴えました。
37.「進歩とは、過去を否定することではなく、それを乗り越えることだ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の改革に対する考え方を示す言葉です。彼は、フランスの伝統や歴史といった「過去」を大切にしながらも、それに固執するのではなく、現代に合わせて発展させ、「乗り越える」ことこそが真の「進歩」だと考えていました。
38.「指導者とは、国民が望むよりも遠くを見据える者である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼のリーダーシップ論を要約した言葉です。彼は、優れた指導者とは、目先の人気や国民の一時的な感情に流されるのではなく、国家の長期的な利益を見据えて、時には不人気な決断も下さなければならないと考えていました。
39.「団結は、意見の一致ではなく、目的の一致から生まれる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の団結に対する考え方を示しています。国をまとめるためには、全員の「意見」が同じである必要はなく、フランスの発展という共通の「目的」に向かって協力し合うことが重要だと訴えました。
40.「人間の価値は、彼がどれだけ自分を超えられるかで測られる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の人間観を表す言葉です。彼は、人間が真の価値を発揮するのは、自分の利益や安楽のためだけでなく、国家への奉仕や自己犠牲など、自分自身を「超える」ような高い目的のために努力する時だと考えていました。
41.「危機は、再生への道を開く。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の不屈の精神を反映した言葉です。彼は、1940年の敗戦や1958年のアルジェリア危機といった国家の「危機」を、単なる困難としてではなく、古い体制を刷新し、フランスがより強く「再生」するための機会と捉えていました。
42.「国民が自らの主人であるとき、国家は強くなる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の民主主義観を要約した言葉です。国民一人ひとりが、国の運命を他人任せにせず、自分たちが国の「主人」であるという意識を持つことで、国家は真に強くなると信じていました。
43.「偉業は、勇気ある少数の者によってのみ達成される。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼のリーダーシップ論とエリート主義的な歴史観を示す言葉です。彼は、歴史を動かすような偉大な事業は、大衆の意見に従うのではなく、先見の明と「勇気」を持った「少数」の指導者たちによって成し遂げられると考えていました。
44.「平和とは、単なる戦争の不在ではなく、正義の存在である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の平和観を要約した言葉です。彼にとって真の「平和」とは、ただ戦争がない状態を指すのではなく、国際社会において公正さや道徳といった「正義」が実現されている状態を意味しました。
45.「私はフランスに奉仕するために生きてきた。そしてそれが私の希望である。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の生涯を貫く愛国心と使命感を凝縮した言葉です。彼は、自らの人生のすべてをフランスという国家に捧げることを目的とし、その奉仕の中にこそ、自らの「希望」を見出していました。
46.「指導者が国民を信じなければ、国民も指導者を信じない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 指導者と国民の間の信頼関係の重要性を説いた言葉です。彼が国民との直接対話や国民投票を重視したのは、この相互の信頼こそが、強い国家の基盤であると考えていたからです。
47.「変化を恐れる者は、未来を失う。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の改革者としての一面を示す言葉です。彼は、伝統を重んじつつも、時代の「変化」に適応することを恐れていては、国家に「未来」はないと考えていました。戦後のフランスの近代化は、この信念に基づいて進められました。
48.「フランスは、彼女自身であるときにのみ生きる。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: フランスの独自性(アイデンティティ)の重要性を強調した言葉です。彼は、フランスがアメリカなどの他国の模倣をするのではなく、自らの文化、言語、歴史に基づいた独自の道を歩むこと、つまり「フランス自身である」ことこそが重要だと考えていました。
49.「愛国心は、国民が自らの歴史と運命を共有する意識である」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の考える「愛国心」の定義を要約した言葉です。彼にとって愛国心とは、人種や民族に基づくものではなく、国民がフランスの「歴史」を共有し、共に未来の「運命」を築いていこうとする連帯の「意識」でした。
50.「指導者は、高くを狙い、大きく見、広く判断する。従って、自分自身を狭き議論をする並の人々から離れさせるのだ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 『剣の刃』で論じられる、指導者に必要な大局観と、人々との間に保つべき「距離」の思想を要約したものです。優れたリーダーは、目先の小さな問題に囚われず、常に全体像を把握し、長期的な視点を持つべきだと示唆します。
51.「権威がなければ統治は成り立たないが、威厳がなければ権威は持続しない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 『剣の刃』の思想に基づく言葉です。指導者が単に権力を持つだけでなく、人々から尊敬され、信頼される存在(威厳)でなければ、その権威は長続きしないという、彼のリーダーシップ論の核心部分です。
52.「偉大さとは、未知の世界へとつながる道だ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 現状に満足せず、常に新しい挑戦を続けることの重要性を説いた言葉です。彼にとって国家の「偉大さ」とは、過去の栄光に安住することではなく、常に「未知の」可能性を追求し続ける姿勢の中にありました。
53.「核兵器は、フランスの独立と安全を保障するものである。」(1963年1月14日の記者会見など)
解説: フランス独自の核兵器開発を正当化する、彼の基本理念です 。彼は、核兵器を持つことで、アメリカやソ連といった超大国に頼ることなく、フランス自身の力で「独立と安全」を守ることができるようになると主張しました。
54.「核兵器は、フランスの国防政策の基盤である。」(1959年11月3日の陸軍士官学校での演説など)
解説: 核兵器をフランスの防衛の中心に据えるという彼の戦略を示す言葉です 。通常兵力に加えて、いかなる国からの攻撃も思いとどまらせる力(核抑止力)を持つことが、国防の「基盤」であると位置づけました。
55.「核兵器は、フランスの国際的な地位を高めるものである。」(1960年代の演説や記者会見)
解説: 核兵器の政治的・外交的な意味を述べた言葉です 。核保有国となることは、軍事的な安全保障だけでなく、国際社会におけるフランスの発言力を強め、その「地位を高める」ための重要な手段であると彼は考えていました。
56.「指導者は、困難な状況で決断を下さなければならない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼のリーダーシップ論の核心をなす言葉です。彼は、指導者の最も重要な資質は、特に先行きが見えない「困難な状況」において、責任を恐れずに最終的な「決断」を下す能力であると考えていました。
57.「困難は、行動を起こす者にのみ解決される。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説: 彼の行動主義的な哲学を表す言葉です。彼は、ただ問題を嘆いたり分析したりするだけでは「困難」は解決しないと考えていました。自らリスクを取って「行動を起こす」ことこそが、状況を打開する唯一の方法だと信じていました。
58.「困難は人格者を惹きつける。なぜなら、困難と格闘することによって自らを実現するからだ。」(戦争回顧録)
解説:多くの人が避けたいと考える「困難」を、ド・ゴールは全く逆の視点から捉えていました。彼によれば、強い意志を持つ「人格者」にとって、困難や挑戦は避けるべき障害ではなく、むしろ自分自身の能力を試し、成長させ、本来あるべき姿を実現するための絶好の機会なのです。これは、常に最も困難な道を選び、国家の危機に立ち向かうことで歴史を動かしてきた、彼自身の生き方を力強く反映した言葉です。
59.「人の世と事件の喧騒のなかで、孤独は私の誘惑であった。今や、孤独は私の友である。歴史と出会ってしまったからには、他に何に満足できようか?」(戦争回顧録)
解説:これはド・ゴールの内面を深くうかがわせる、非常に文学的な言葉です。指導者としての日々の喧騒の中で、彼は静かな「孤独」に惹かれることがありました。しかし、国家の運命を背負い、歴史を動かすという巨大な責任(「歴史と出会う」)を一度引き受けてしまった以上、その重圧と向き合うための「孤独」は、もはや逃避先ではなく、唯一無二の「友」となったのです。国家の指導者が背負う計り知れない重圧と、常人には理解しがたい精神世界が見事に表現されています。
60.「そうだ、ヨーロッパだ。大西洋からウラル山脈までのヨーロッパ、全てのヨーロッパが、世界の運命を決定するのだ。」(ストラスブール大学での演説、1959年11月22日 )
解説:これは冷戦でヨーロッパが東西に分断されていた時代に語られた、彼の壮大な地政学的ビジョンを示す言葉です。当時、多くの人が「ヨーロッパ」を西ヨーロッパ共同体(EEC)と同一視していましたが、ド・ゴールはソ連の影響下にあった東欧諸国も含めた、地理的なヨーロッパ全体を一つの文明圏として捉えていました。これは、アメリカとソ連の二大国が世界を支配する体制に異を唱え、ヨーロッパが自立した一つの極として「世界の運命」を担うべきだという、彼の強い意志の表れです。
61.「246種類ものチーズがある国を、どうやって治めろと言うのかね?」(1951年頃の発言としてジャーナリスト、ジャン=レイモン・トゥルヌーが記録 )
解説:これは、フランスという国を統治することの難しさを、ユーモアを交えて表現したド・ゴールの最も有名な言葉の一つです。おびただしい数のチーズは、フランス人の根深い個人主義、豊かな地域性、そして画一的なものへの抵抗精神を象徴しています。彼は、これほど多様で独立心旺盛な国民を一つにまとめることがいかに困難であるかを、愛情のこもった皮肉で嘆いているのです。
62.「私が尊敬するのは私に抵抗する人間だけだ。しかし、彼らを我慢することはできない。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説:この逆説的な言葉は、指導者としてのド・ゴールの複雑な人間性を鋭く表しています。彼は、自分と同じように強い信念や独立心を持ち、安易に迎合しない人物(私に抵抗する人間)に敬意を払いました。しかし同時に、フランスのために唯一無二のビジョンを持つ指導者として、自らの計画の障害となりうる反対意見や人物を許容(我慢)することは難しかったのです。強い個性を持つ者への敬意と、自らの権威を絶対とする指導者としての顔が同居する、彼の本質が垣間見える言葉です。
63.「国を治めるということは、常に不利なものの中から選択するということだ。」(ド・ゴールの思想に基づく要約)
解説:この言葉は、ド・ゴールの現実主義的な政治哲学を端的に示しています。彼にとって、政治の世界に完璧な解決策は存在しません。指導者の仕事とは、理想的な道を探すことではなく、いくつもの不完全な選択肢を天秤にかけ、国家にとって最も害が少なく、あるいは最も利益が大きいと思われる道を選ぶことでした。これは、理想論を排し、現実的な結果を重んじる彼の政治家としての覚悟を表しています。


コメント