top of page

オルテガの名言集 1883-1955

  • 執筆者の写真: 石田卓成
    石田卓成
  • 3月7日
  • 読了時間: 18分

更新日:10月4日

ree

ホセ・オルテガ・イ・ガセット

【第1章】 「大衆」と「貴族」

1. 「大衆」の定義

「大衆とは、善い意味でも悪い意味でも、自分自身に特殊な価値を認めず、自分は『すべての人』と同じだと感じ、そのことに苦痛を覚えるどころか、満足しているあらゆる人間のことである。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: オルテガが定義する「大衆」とは、社会階級や人数ではなく、精神のあり方を指します。「自分は特別ではなく皆と同じだ」と感じることに安心し、むしろ心地よさを覚える人々のことです。彼らは異質なものや卓越した個人を嫌い、画一的であろうとする傾向があります。


2. 「貴族(卓越せる人々)」の定義

「貴族とは、自らに多くを要求し、困難と義務を負わんとする者であり、権利を要求するものではない。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: ここで言う「貴族」は、血筋や身分ではなく、高貴な精神を持つ人のことです。彼らは常に自らに高い目標を課し、権利を主張するよりも先に、社会に対する責任や義務を果たそうと努力します。より大きな目的のために生きることに価値を見出す人々です。


3. 「大衆」と「貴族」の根本的な違い

「人間に対して為され得る最も根本的な区別は次の二つである。一つは自らに多くを要求して困難や義務を課す人、もう一つは自らに何ら特別な要求をせず、波の間に間に浮標のように漂っている人である。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 人間は本質的に二種類に分けられるとオルテガは言います。常に向上しようと努力を続ける「貴族」と、自分はすでに完璧だと思い込み、何の努力もしない「大衆」です。この自己に対する要求の有無が、両者の生き方を決定的に分けています。


【第2章】 「大衆」の精神と行動

4. 知的傲慢さ

「大衆的人間は、自分が完璧だと感じており、知的な面で誰かの助けを借りる必要を全く感じていない。彼は人の言うことを聞かない。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 大衆の最大の特徴は、自らを万能だと信じ、自分を疑うことや他者から謙虚に学ぶ姿勢を持たない点にあります。自分の考えがすべてであり、外部の意見や権威に耳を貸さないため、精神的に閉鎖的で成長がありません。


5. 歴史感覚の欠如

「大衆は、文明をまるで原始の森のように自然に存在するがごとく捉え、それを維持する努力を理解していない。彼らは過去の内臓を持たない人間である。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 私たちが享受している文明や権利は、過去の人々の多大な努力の上に成り立っています。しかし大衆は、その歴史的背景を理解せず、すべてを当然のものとして消費します。過去への敬意を欠き、文明を支える責任を放棄する傾向があります。


6. 生の計画性の欠如

「大衆人の生活は、本質的に計画を欠いており、漂流に身を任せている。彼らは根拠のない権利と安易な快楽、無責任な消費の上に生を築こうとする。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 大衆は長期的な人生の目標や計画を持たず、その場限りの快楽や欲望に従って生きています。自分の人生を主体的に築き上げるのではなく、ただ運命に流されるまま漂流するような生き方だと批判しています。


7. 思考と判断力

「大衆の理性は、情熱の奴隷である。彼らは自ら発想する能力を欠き、扇動的な言説や感情的な訴えかけに乗りやすい。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 大衆は、物事を論理的・批判的に深く考えることが苦手です。そのため、冷静な判断よりも感情やムードに流されやすく、特に政治においては、扇動家の巧みな言葉に簡単に影響されてしまう危険性を持っています。


8. 無批判な享受

「大衆は、批判なしに、ただ喜び、満足し、感謝することなしに、与えられたものを受け取ることを通例とする。」(大衆の反逆) 要約

解説: 社会から与えられたものに対し、「なぜこうなのか」「もっと良くならないか」といった批判的な視点を持ちません。感謝の気持ちも薄く、あらゆる恩恵を当然の権利として、ただ受け取ることに終始します。


9. 専門家大衆

「専門家大衆とは、自分の専門分野では有能だが、それ以外のことは全く知らず、世界全体に対する視野を欠いている者である。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 現代社会の問題点として、専門分野のことしか知らない「専門家」の増加を挙げています。彼らは自分の専門外のことには無知で無関心なため、全体を見通す広い視野を欠いています。これもまた、精神のあり方としては「大衆」の一種であるとオルテガは指摘します。


【第3章】 「大衆の反逆」と社会

10. 「大衆の反逆」の本質

「大衆の反逆とは、特殊な資格を持たない人々が、自分たちの欲望を法として押し通そうとする傾向であり、政治的というより、むしろ道徳的なものである。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: これは、凡庸な人々が専門的な知見や社会の秩序を無視し、自分たちの意見や欲望を無理やり押し通そうとする社会現象を指します。オルテガはこれを単なる政治体制の問題ではなく、社会全体の道徳が崩壊する文明の危機だと捉えました。


11. 大衆支配の帰結

「大衆の勝利は、同時に、人間の没落である。その支配は文化の質の低下をもたらし、精神の自由に対する脅威となる。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 「皆と同じ」を好む大衆が社会の中心になると、個性的なものや優れたものが評価されにくくなり、文化は画一化し、レベルが低下します。また、周りに合わせることが強制され、自由に考える精神も脅かされるため、社会全体が衰退してしまうと警告しています。


12. 大衆の非道徳性

「大衆の道徳は、根本的に非道徳的である。」(大衆の反逆) 要約

解説: 大衆の行動基準は、個人の内面的な倫理観ではなく、「みんながやっているから」という外的要因にあります。そのため、悪いことでも平気で行う傾向があり、それは真の意味での道徳とは言えない、とオルテガは断じています。


13. 指導者の不在

「大衆は、歴史の中でつねに導かれる立場にあったが、今や自らを主人であると考えるようになった。」(大衆の反逆)

解説: 本来、社会は優れた少数者によって導かれるべき存在でした。しかし近代になり、導かれるべき大衆が自らを社会の主人だと勘違いし始めたこと、これが「反逆」であると指摘します。彼らは優れた指導者を軽んじ、社会を混乱に陥れます。


14. 知的凡庸さの権利化

「知的凡庸さは、それ自体は許容できる悪かもしれないが、それが権利として確立され、いたるところでそれを押し付けようとするとき、耐え難いものになる。」(大衆の反逆)

解説: 平均的であること自体は悪ではありません。しかし、「普通」や「平均」であることを盾に思考停止を正当化し、それを他者にも強要する風潮は、社会全体の知的水準を著しく低下させる危険な兆候だと述べています。


15. 民主主義への評価と懸念

「民主主義は、最も高貴な社会体制であり、最も脆弱な社会体制である。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: オルテガは、自分と意見が異なる少数派とも共存しようとする民主主義の寛容さを「高貴」なものとして評価しています。しかしその一方で、大衆が権利ばかりを主張して義務を忘れ、その寛容さにつけ込むことで、民主主義は容易に衆愚政治へと堕落してしまう「脆弱」なシステムでもあると警告しました。


【第4章】 生き方・哲学・歴史

16. 「真正な生」とは

「真正な生とは、自己の義務や天職に向かって惰性に抵抗し、自己の可能性を最大限に開花させるための不断の努力の中にある。」(大衆の反逆) 統合・要約

解説: 人間らしい本物の生き方とは、ただ楽な方に流される人生ではありません。時には困難な「すべきこと」に向き合い、自分の能力を最大限に発揮しようと努力し続けることの中にこそ、生きる意味や価値が見出せると説いています。


17. 人生は「創造」である

「人生とは、本来、自由であり、自己決定である。私たちは人生を創造しなければならない。」(大衆の反逆ほか) 統合・要約

解説: 私たちの人生や運命は、あらかじめ決まっているものではありません。日々の選択と決断を積み重ね、自らの意志と行動によって主体的に創り上げていくものです。生きることそのものが、創造的な行為なのです。


18. 自己を問い続ける存在

「人間は、常に自分自身を問い直す存在である。自分が何者であるかについて常に不確かであり、自分自身を発見しなければならない。」(人間と人々ほか) 統合・要約

解説: 人間は「自分とは何か」「どう生きるべきか」という問いに対する明確な答えを持っていません。だからこそ、現状に満足せず、哲学や芸術などを通して常に自己を探求し、より大きな可能性へと向かっていく存在なのです。


19. 哲学の本質

「哲学は、すべての学問と同様に、まず疑うことから成る。それは真理の体系ではなく、真理に対する態度である。」(哲学とは何か?) 統合・要約

解説: 哲学とは、完成された「答え」を学ぶ学問ではありません。常識や権威を鵜呑みにせず、「本当にそうなのか?」と批判的に問い続け、「真理とは何か」を探求し続ける「姿勢」そのものを指します。そのため、常に素人のような純粋な疑問を持ち続けることが重要です。


20. 歴史から学ぶ意味

「歴史とは人間が自己喪失を防ぐための試みであり、過去との対話である。人間は過去を基盤として未来を発明する。」(体系としての歴史ほか) 統合・要約

解説: 歴史を学ぶことは、単に過去の出来事を暗記することではありません。過去の人々の思考や行動から教訓を学び、現在の私たちが進むべき道を探る、いわば「過去との対話」です。それにより自分たちのアイデンティティを確認し、未来を創造する力とします。


21. 自由と絶望

「人が自らの存在に絶望するのは、人が自らの存在に義務を負っているからであり、人が義務を負っているのは、人が自由だからである。」(人間と人々) 意訳

解説: 人間は自由であるからこそ、自らの行動に全責任を負わなければなりません。その責任の重圧が、時に私たちを絶望させます。しかし、その絶望を感じることこそが、人間が単なる動物ではなく、自由な存在であることの証左なのです。


22. 努力なき生の空虚

「もし生きることが、すでに自分がそうであるものの、もう一瞬の連続にすぎないとしたら、生きることは空虚で無意味なものとなるだろう。」(大衆の反逆) 意訳

解説: もし人生が、変化も成長もなく、ただ同じ自分の繰り返しであるならば、それは非常に空虚なものになってしまいます。常に新しい目標を持ち、自己を超えようと挑戦し続けることこそが、生きる意味を見出すために不可欠です。


【第5章】 その他の名言

【知性・理性】

23. 「理性は、それ自身の限界を知っているときにこそ、最大の力を持つ。」(ドン・キホーテをめぐる省察) 意訳

解説: 人間の考える力(理性)は、決して万能ではありません。「自分は何でも知っている」と考えるのは間違いで、むしろ「ここからは自分の専門外だ」「この点については知識が足りない」と、自分の能力の限界を正直に認めることこそが、本当に賢い理性の使い方だということです。知らないことを知ったかぶりするのではなく、限界を認めて専門家に助言を求める方が、結果的に良い判断に繋がります。


24. 「知性とは、現実という迷宮の中で自分の道を切り開くこと、現実を問題として引き受けること、現実の複雑さを理解することである。」(哲学とは何か?) 意訳

解説: 本当の意味で「頭が良い」とは、テストの点数が高いことや、知識をたくさん暗記していることではありません。答えのない複雑な現実社会という「迷宮」の中で、問題から目を背けずに立ち向かい、自分自身の頭で考えて解決策を見つけ出す能力こそが、真の知性だとオルテガは言います。


【技術と自然】

25. 「技術は、自然に対する人間の反乱であり、自然を克服する喜びである。」(人間と技術) 要約

解説: 人間は生まれつき空を飛べませんし、深海で呼吸もできません。そうした自然から与えられた限界に対して「ノー」を突きつけ、乗り越えようとする意志の表れが「技術」です。飛行機や潜水艦は、まさに自然への「反乱」であり、それを成し遂げた時に人間は大きな喜びを感じるのです。


26. 「最も原始的な技術 - 石を研ぐこと - は、すでに知性の勝利である。」(人間と技術) 意訳

解説: 一見単純に見える「石を研いでナイフを作る」という行為も、実は高度な知性の働きです。ただの石ころを「道具」という未来の目的のために加工するには、「こうすれば鋭くなるはずだ」という原因と結果を理解し、計画する能力が必要です。これは、スマホを開発する現代の技術にも通じる、知性の根源的な勝利なのです。


27. 「近代人は、自然を征服しようとする。」(人間と技術) 要約

解説: かつて人間にとって自然は、畏怖や崇拝の対象でした。しかし、科学技術が発達した近代以降、人間は自然をコントロール可能な「対象」や「資源」と見なすようになりました。遺伝子を組み換えたり、農薬を開発するような行為は、自然と共に生きるのではなく、自然を支配下に置こうとする近代的な考え方の表れです。


【少数者の役割】

28. 「少数者は、常に未来を志向する。」(大衆の反逆) 意訳

解説: 大多数の人々(大衆)が現状維持や目先の楽しさに満足しがちなのに対し、オルテガの言う「少数者(貴族)」は、常に現状に満足せず、「もっと社会は良くなるはずだ」「新しい価値を創り出せないか」と考え、未来を見据えて行動する人々です。社会の変革は、常にこうした未来志向の少数者によって牽引されます。


29. 「真に創造的な少数者は、没落の時代にあっても、新たな価値を創造し、社会を導く使命を担っている。」(大衆の反逆) 要約

解説: 社会が混乱し、古い価値観が通用しなくなった「没落の時代」には、多くの人々が道を見失います。そんな時代にこそ、創造的な才能を持つ少数の人々が、絶望せずに新しいビジョンや価値観を生み出し、迷える社会を導いていくという重要な使命を担っているのです。


【現代社会と文明】

30. 「現代文明は、物質的繁栄と裏腹に、人々に不安と目的喪失感を生み出している。」(大衆の反逆) 要約

解説: 現代社会はモノや情報に溢れ、歴史上最も便利な時代です。しかし、その物質的な豊かさが、必ずしも人々の心の幸福に結びついているわけではありません。むしろ、何のために生きているのか分からなくなったり、将来への漠然とした不安を感じたりする人が増えている、という現代の矛盾を指摘しています。


31. 「文明は、それ自身の中に衰退と死の原理を孕んでいる。」(大衆の反逆) 意訳

解説: どんなに栄えた文明も永遠ではありません。むしろ、繁栄の絶頂期にこそ、内部から腐敗や堕落といった衰退の要因が静かに育ち始める、という歴史の法則を指摘しています。成功にあぐらをかき、努力を怠った瞬間に、文明は崩壊へと向かい始めるのです。


32. 「いまや文化は、羅針盤を失った船のように、大海原を漂流している。」(大衆の反逆) 意訳

解説: かつての社会には、宗教や伝統といった、人々の生き方の指針となる絶対的な価値観(羅針盤)がありました。しかし現代ではそうした共通の価値観が失われ、文化全体が進むべき方向を見失い、ただ流行に流されるだけの、目的のない漂流船のようになっていると比喩しています。


33. 「現代人は、驚くべきほどの多くの可能性を手にしているが、その豊富さの中で途方に暮れているのである。」(大衆の反逆) 要約

解説: 現代は、職業やライフスタイルなど、生き方の選択肢が非常に多い時代です。しかし、選択肢が多すぎることによって、かえって「自分は本当は何をしたいのか」が分からなくなり、選べずに立ち尽くしてしまうという「選択のパラドックス」に陥っている現代人の姿を描写しています。


【社会と人間】

34. 「社会は常に解体の危機に瀕している。」(人間と人々) 意訳

解説: 私たちが当たり前だと思っている社会の平和や秩序は、実は非常に脆いものです。社会は常に、内部の対立や外部からの脅威によって、いつ崩壊してもおかしくない緊張状態にあります。その秩序を維持するためには、構成員一人ひとりの不断の努力が必要なのです。


35. 「社会秩序は、命令を発する能力を持つ少数者と、それに服従する多数者によって維持される。」(歴史における危機) 要約

解説: これは独裁を肯定しているわけではなく、あらゆる集団の基本構造を指摘したものです。学校のクラスでも会社でも、方向性を示すリーダー役(少数者)と、その方針に従って協力するメンバー(多数者)という役割分担がなければ、集団はまとまらず、秩序は生まれません。


36. 「真の命令とは、強制力ではなく、人々の自発的な服従を引き出す力である。」(歴史における危機) 要約

解説: 本当のリーダーシップとは、恐怖や権力で人を無理やり従わせることではありません。その人のビジョンや人柄に感銘を受けた人々が、「この人についていきたい」と心から思い、自発的に協力したくなるような影響力こそが、真の「命令」=リーダーシップであると述べています。


37. 未来への共同事業と生の意義

人間を真に結びつけるのは、共有された過去ではなく、未来に向けた共通の事業(プロジェクト)である。人は自分自身を超えたこの共同事業に身を捧げることによって、初めて生の意味を見出す。(人間と人々、大衆の反逆より統合・要約)

解説: オルテガによれば、人間は自分のためだけに生きていると虚しさを感じる存在です。人生に意味や生きがいを見出すためには、家族、社会、あるいは理想といった、自分という個人を超えた大きな目標や共同体への献身が不可欠となります 。そして、オルテガは特に国家のような共同体を真に結束させるものは、血縁や共有された過去の歴史ではなく、「未来を共にどう築いていくか」という共通のプロジェクトであると強調します 。つまり、個人が未来に向けた共通の事業に自らを捧げるとき、その人の生は意味で満たされ、同時に共同体は強固な絆で結ばれるのです。


38. 「人間が生きるためには社会が必要だ。社会は人間の可能性が詰まった場所だからだ。」(大衆の反逆) 意訳

解説: 私たちが社会を必要とするのは、単に安全や便利さを得るためだけではありません。スポーツ選手がライバルと競い合うことで成長するように、人間は他者と関わり、協力し、時には対立する社会という舞台があって初めて、自分の持つ才能や可能性を最大限に開花させることができるのです。


【真理・連帯】

39. 「真実は単一の視点によって捉えられるものではなく、様々な視点の統合によって初めて捉えられる。」(真理と視点) 要約

解説: 1つの物事も、見る角度によって全く違って見えます。誰か一人の視点が絶対に正しいということはなく、様々な立場からの多様な視点をパズルのように組み合わせることで、初めて物事の全体像(真理)に近づくことができる、という考え方です。


40. 「真の連帯は、差異を認め、尊重することから生まれる。」(大衆の反逆) 意訳

解説: 本当の仲間意識や団結は、全員が同じ考えを持つこと(同質性)から生まれるのではありません。むしろ、お互いの個性や考え方の「違い」を認め、尊重し合った上で、共通の目的に向かって協力することから、より強固で豊かな連帯が生まれるのです。


【世代と歴史】

41.「革命が続くのは十五年、一世代が活躍する期間と一致する。」(大衆の反逆)

解説: オルテガは歴史を動かす単位として「世代」を重視しました。この言葉は、革命のような大きな社会変革を推進する情熱やエネルギーも、一つの世代が社会の中心で活躍する約15年という期間と連動していることを指摘しています。世代が入れ替われば、社会の価値観や関心も変化するという、彼の歴史観を象徴する名言です 。  


【愛と自己認識】

42.「我々が好む人間のタイプは、我々の心の輪郭を明らかにする。」(人間と人々)

解説: 人が誰を愛し、どのような人に惹かれるかは、その人の最も深い部分にある本質を映し出す鏡であるとオルテガは言います。恋愛や友情において相手に求めるものは、自分自身の価値観、理想、そして欠落している部分の裏返しでもあります。したがって、誰を好きになるかを知ることは、自分自身が何者であるかを知るための重要な手がかりとなるのです 。  


【生と選択】

43.「生きるとは、我々が何をしようとしているのかを、絶えず決定していくプロセスである。」(人間と人々)

解説: この言葉は、人生が受動的な出来事の連続ではなく、能動的な選択の連続であることを強調しています。私たちの生は、あらかじめ定められた運命ではなく、日々の決断によって「創造」されていくものです。何もしないという選択でさえも一つの決定であり、その責任から逃れることはできない、というオルテガの「生の哲学」の核心がここにあります 。  


【その他】

44. 「ファシズムとボリシェヴィズムは、同じ起源から生まれた、二つの現代の擬似ヒューマニズムの二つの形態である。」(大衆の反逆) 要約

解説: 20世紀前半に台頭したファシズム(右翼全体主義)とボリシェヴィズム(共産主義、左翼全体主義)は、敵対しているように見えます。しかしオルテガは、どちらも個人の自由や複雑な議論を嫌い、単純で暴力的な解決を好む「大衆」の精神から生まれた点で、根は同じだと見抜きました。


45. 「直接行動が規範になるとき、人は以前に『政治』が存在しなかったと言ってもよい。」(大衆の反逆) 要約

解説: ここで言う「直接行動」とは、デモや暴力といった実力行使のことです。本来、「政治」とは、異なる意見を持つ人々が対話やルールに基づいて合意形成を図る文明的なプロセスです。そのプロセスを無視して、暴力が当たり前になった社会は、もはや政治が機能していない野蛮な状態だと言えます。


46. 「愛国心は、歴史的な感情であり、連帯感の形式である。」(大衆の反逆) 意訳

解説: 愛国心とは、ただ「自分の国が一番だ」と考える単純な感情ではありません。過去から未来へと続く壮大な国家という共同プロジェクトに参加しているという意識であり、同じ歴史を共有する同胞たちと共に未来を築いていこうという、時間的・空間的な「連帯感」の一つの形なのです。


47. 「人間を動かす力、それが権力である。」(大衆の反逆) 意訳

解説: 「権力」と聞くと、首相や社長といった地位を思い浮かべがちです。しかし、この言葉が指すのはもっと本質的な意味です。地位や肩書がなくても、その人の言葉や行動が、他者の心を動かし、行動を促す影響力を持つならば、それこそが真の「権力」なのです。


48. 「人生とは、常に何か他のもののために、何か他のものの代わりに、行うことである。」(人間と人々) 意訳

解説: 人生の時間は有限です。そのため、何か一つを選ぶことは、同時にそれ以外の全ての可能性を捨てることを意味します。例えば、大学で法学を学ぶと決めたなら、その時間は医学を学ぶためには使えません。このように、私たちの人生は、常に何かを諦める(トレードオフ)という選択の連続で成り立っているのです。


49. 「私は私と私の環境である。そして、もし私がこれを救わないなら、私は私を救わない。」(ドン・キホーテをめぐる省察)

解説: 「私」という存在は、それ単体で存在するのではなく、時代や国、家族といった「環境」と一体不可分である、という意味です。自己実現を果たすためには、自分だけを見るのではなく、自分が置かれた環境の問題に関わり、それをより良く変えていく努力が必要です。環境を救うことは、巡り巡って自分自身を救うことになるのです。

ree

 
 
 

コメント


防府市議会議員|石田卓成|ロゴ

​石田たくなり後援会事務所


〒747-0062 
防府市大字上右田 1068-5(自宅)

防府市大字上右田 329-2(事務所)

本人携帯   090-4650-4324
 FAX  0835-38-4084

Copyright© 石田たくなり後援会事務所 All Rights Reserved.    

  • Facebook Social Icon
  • YouTubeの

TOPに戻る

bottom of page