1.解説:
金融所得課税を総合課税方式に変更するとは、株式の売買で得た利益や株式の配当金、預貯金の利子など、金融資産から生じる所得を、給与所得や事業所得など他の所得と合算し、累進税率を適用する方式にすることです。現在の分離課税方式では、金融所得には一律の税率(約20%)が適用されるため、所得税の最高税率を超える所得を得ている高所得者においては、金融所得への税負担が、給与所得等への税負担と比較して相対的に低くなるケースがあります。これは所得格差の拡大要因の一つとなっています。総合課税方式に移行し、金融所得を給与所得などと同様に累進税率の対象とすることで、高所得者層の税負担を適切に調整し、税負担の公平性を高めることが期待されます。
2.海外の事例: (注:各国の税制は頻繁に変更される可能性があるため、下記は2024年5月時点での情報に基づいた一例です。また、税率などの数値は、所得水準やその他の条件によって異なる場合があります。)
(1) アメリカ: アメリカでは、金融所得のうちキャピタルゲインは保有期間によって異なる税率が適用され、長期保有に対しては分離課税に近い優遇措置が取られています。
・短期(1年未満):給与所得と同じ累進税率(最大37%)が適用
・長期(1年以上):所得に応じて0%、15%、20%のいずれかの税率が適用され、長期保有の投資には優遇措置が取られています。
(2) イギリス: 配当所得や利子所得は、一定の免税枠を超えると累進税率が適用される制度です。
・キャピタルゲイン税率は、所得税の基本税率適用者は10%、所得税の追加税率適用者は20%(居住用不動産の譲渡の場合は18%/28%)で、詳細な条件によって税率が変動する場合があります。
・配当税率は所得に応じて8.75%、33.75%、39.35%と区分されます。
(3) ドイツ: ドイツでは2009年より金融所得に対して一律25%の源泉徴収課税(分離課税方式)が導入されました。ただし、納税者の所得税率が25%より低い場合は、確定申告をして還付を受けることが可能です。
(4) フランス、スウェーデン、デンマークなどの北欧諸国: フランスでは2018年より金融所得に対して一律30%(所得税12.8%+社会保険料17.2%)のフラットタックス(PFU)が導入されています。ただし、低所得者は従来の総合課税方式を選択できる仕組みがあります。北欧諸国では高所得層への税負担が比較的高く、税制を通じた積極的な所得再分配政策が採用されていますが、これは社会保障制度全体と合わせて考える必要があります。
(5) オーストラリア: 金融所得は総合課税の対象です。キャピタルゲインには累進税率が適用されますが、1年以上保有したキャピタルゲインには50%の控除が適用され、長期投資を促進する仕組みがあります。
(6) カナダ: 金融所得は総合課税の対象です。キャピタルゲインは50%のみが課税所得として計上され、残り50%は非課税となるため、実質的な税負担が軽減され、長期投資を促す効果があります。配当所得には税額控除が適用され、実質的な税負担が軽減されます。
(7) ニュージーランド: ニュージーランドでは正式なキャピタルゲイン税は存在しません。ただし、取引頻度や投資目的によっては、キャピタルゲインが所得とみなされ、課税対象になる場合があります(例:短期的な不動産売買など)。他国と異なり、金融所得への課税を軽減する制度の例として対照的に考察できます。
3.まとめ:
日本の分離課税制度は、各国の制度と比較して高所得者の税負担を相対的に軽減し、所得格差の拡大を招く可能性があります。オーストラリアやカナダのように、長期投資を促す控除制度を導入するなど、公平性と投資促進のバランスを考慮した税制改革が求められます。格差是正の観点から、金融所得課税を総合課税方式へ移行することを求めてまいります。

※生成AIも活用しています。
※議連としての統一見解ではなく、私個人としての考えとなります。
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