1.解説:
法人税の累進課税制度の強化は、単に税収を増やすだけでなく、行き過ぎた強欲資本主義を是正し、企業の利益がより公正に社会全体へ分配されることを目指すものです。かつての高度成長期には、企業の成長が社員の給与増や地域社会の発展に繋がり、経済成長の果実が広く共有されていました。しかし現代においては、利益が一部の役員や株主に集中し、社員や地域への還元が不十分となる傾向が強まっています。
法人税の累進課税制度強化は、この状況を打開し、中小企業の成長を促すことで、日本経済全体を活性化し、持続可能な成長を目指す戦略で、以下の3つの目標の達成を目的としています。
(1)中小企業を地域社会を支える成長エンジンへと変革:
法人税の累進課税制度を強化することで、中小企業に対し、より低い税率を適用し、利益を企業の手元により多く残しやすくします。これにより、中小企業は、地域での雇用創出、社員の賃上げ、地域経済を活性化させる技術革新への投資を積極的に行うことができます。中小企業は、地域経済の生命線であり、多様な産業を育成する母体です。その成長こそが、日本経済全体の底力を強化し、地域社会全体に新たな繁栄をもたらす鍵となります。
(2)大企業の社会的責任の明確化と、社員・社会との持続的成長の両立:
大企業や高収益企業には、その収益力に応じた、相応の税負担を求め、株主だけでなく社員や地域社会への貢献を促します。大企業が、その経済力に見合う納税を果たすことは、公共サービスの質を向上させ、社会全体の安定と発展、ひいては社員が安心して生活できる社会の実現に貢献します。 特に、法人税の累進課税制度強化においては、大企業による租税回避行為への対策を不可欠な要素として組み込みます。2021年10月、OECD(経済協力開発機構)などの国際的な話し合いで、新しい国際課税ルール(「第2の柱」※グローバル・ミニマム課税と呼ばれています)が合意されました。これは大企業、特に多国籍企業が、税率の低い国に利益を移して税金を安く済ませようとする「税金逃れ」を防ぐためのものです。
具体的には、
・世界共通の最低税率: どこの国で事業を行っても、最低限15%の法人税を払うようにします。
・税金逃れの抜け穴をふさぐ: 税金の安い国に利益を移すなど、巧妙な税金逃れを防ぐための対策を強化します。
・各国の税務署が協力: 世界中の税務署が協力して、税金逃れを見つけ出し、厳しく取り締まります。
この「グローバル・ミニマム課税」と呼ばれる仕組みで、大企業からきちんと税金を集め、税金の公平性を守り、企業が社会貢献に積極的になることを目指します。
(3)フェアな競争環境の創造と、地域経済を含む経済全体の健全性向上:
法人税の累進課税制度強化は、企業の規模と納税能力に応じた、公平な税負担を実現し、大企業と中小企業の間に存在する税負担の不均衡を是正します。これにより、中小企業は、公平な競争環境で事業を展開しやすくなり、起業家精神を刺激し、地域社会に根差した多様性と活力に満ち溢れた経済を形成します。公正な競争環境は、イノベーションを促し、経済全体の進歩を後押しします。その恩恵が社会全体に広がることが期待されます。
2.海外の事例:(※以下、2024年平均為替レートで換算。)
(1)オランダ: 約3,140万円までは19%、それを超えると25.8%の法人税率。中小企業を応援し、経済を活性化する仕組み。新技術開発を支援する税制優遇あり。
(2)フランス: 年間利益約4,200万円以下の中小企業には15%、それ以上は25%の法人税率。中小企業の成長を促し、大企業の適切な税負担を確保。環境・社会責任を果たす企業への税制優遇あり。
(3)ドイツ: 法人税15%に加え地方税が課される。大企業ほど高い税率が適用される傾向。研究開発や環境対策を行う企業には税額控除を設ける。
(4)デンマーク: 標準法人税率22%。厳格な移転価格税制を採用し、多国籍企業の適正課税を確保。企業の社会的責任(CSR)に積極的な企業には税制優遇。
(5)スウェーデン: 法人税率20.6%。企業規模や社会的影響に応じた累進的税負担の仕組み。環境・福利厚生に積極的な企業には税制優遇。租税回避対策を強化し、多国籍企業の適正課税を確保。
3.日本の法人税累進課税の歴史
(1)1950年:法人税率は、所得金額に応じた累進税率が適用され、所得金額に応じた公平な税負担を実現し、社会全体の安定に貢献しました。
(2)1960年代:高度経済成長期には、法人税収の確保と大企業の税負担増を目的として、累進税率が大幅に強化されました。これは、成長の果実を公共投資に還元するという考え方に基づき、国民全体の生活水準向上に寄与しました。
(3)1970年代:石油危機後の経済状況の変動に対応するため、法人税率の見直しが頻繁に行われました。税制は経済状況に柔軟に対応する必要があることを示しています。
(4)1980年代以降:企業の国際競争力強化や経済の活性化を目的とした税制改革の一環として、累進税率は段階的に緩和されました。ただし、これは同時に法人税収の減少や、所得再分配機能の低下といった側面も指摘され、法人税減税の穴埋めとして消費税の増税が行われてきたとの指摘もあります。
4.結論:この提言が目指すもの
この提言は、過去の日本の歴史や世界の事例、そして新しい国際的な税金逃れ対策を踏まえ、行き過ぎた強欲資本主義による弊害を是正し、今の日本経済の問題を解決し、未来を明るくするためのものです。
この提言によって、
・中小企業が地域社会を支える成長エンジンへと戦略的に成長できるよう支援する
・大企業には株主だけでなく社員や地域社会への社会的な責任を果たしてもらう
・公平な競争環境を整え、経済成長の果実が広く社会全体に分配されるようにする
ことで、社員一人ひとりの生活の安定、地域社会の活性化、そして社会全体の持続的な発展に貢献することが期待されます。
「グローバル・ミニマム課税」は、世界中で協力して不適切な租税回避行為を防ぐ画期的な取り組みであり、日本も積極的に参加し、国内の制度を整えるべきです。税制改正は、経済や社会の変化に応じて、継続的に見直すことが重要です。具体的には、経済成長率、企業の収益状況、国際的な税制の動向、そして租税回避の状況などを踏まえて、定期的な評価と見直しを行うべきです。常に社会の変化に対応し、より公正で持続可能な社会を目指す姿勢が重要です。
法人税の累進課税強化によって、企業が従業員の待遇改善や設備投資により積極的に取り組める環境を整えることを目指します。

※生成AIも活用しています。
※議連としての統一見解ではなく、私個人としての考えとなります。
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