この度、参加をさせていただいた、農地を守るための勉強会の講演録と資料の内容を要約したものになります。我々の上右田地域においても、圃場整備の話を進めており、来年度(令和8年度)の国採択を目標に皆で頑張っておりますが、まだ身体は元気なので農機があるうちは頑張りたいと仰られる方が数名おられます。この度、教わった方法は、そういった皆さまとも一緒になり力を合わせて地域を守っていける素晴らしい方法だと思います。
早速、勉強会終了後に一緒に参加されていた地元の農業委員会推進委員さんと話し合い、我が地域でも取り入れるように提案していこうという話になりました。※以下、報告書はGeminiにまとめてもらいました
題名:地域農業の未来を拓く「地域まるっと中間管理方式」の可能性
講師:可知祐一郎先生(魅力ある地域づくり研究所代表) 日時:令和7年1月31日(JA3階)
はじめに
近年、日本農業は担い手不足、高齢化、耕作放棄地の増加といった深刻な課題に直面している。こうした状況の中、個別経営の限界を克服し、地域ぐるみで農地を守る新たな手法として「地域まるっと中間管理方式」が注目を集めている。本レポートでは、この方式の優位性、各地の優良事例の取り組みを紹介し、地域農業の持続可能性を高めるための方策を探る。
1. 「地域まるっと中間管理方式」とは
「地域まるっと中間管理方式」とは、地域が主体となって設立した一般社団法人(非営利型)が、農地中間管理機構(農地バンク)から地域内の農地を一括して借り受け、担い手への農地集積・集約化と、自作希望農家の営農継続を両立させる仕組みである。具体的には、以下の手順で進められる。
(1) 集落等を範囲として非営利型一般社団法人を設立し、担い手・自作希望・出し手の全てが加入する。
(2) 地域の全ての農地を農地バンクに貸し付ける。
(3) 一般社団法人が農地バンクから全ての農地を借り受ける。
(4) 耕作可能な自作希望農家とは、特定農作業受委託契約を締結し、従来通りの耕作を継続してもらう。
(5) 耕作できなくなった農地は、一般社団法人が直接経営、もしくは新たな担い手に再貸付する。
2. 一般社団法人方式(地域まるっと中間管理方式)の優位性
この方式は、従来の農事組合法人や株式会社と比較して、以下の点で優れている。
* 担い手と自作希望農家の共存: 特定農作業受委託契約により、自作希望農家の営農継続を支援しながら、担い手への農地集積・集約化を進めることができる。
* 中山間地域等直接支払交付金、多面的機能支払交付金等の受け皿: 地域の各種交付金事業の受け皿となり、事務負担の軽減や、活動資金の確保に貢献できる。
* 設立の簡便さ: 行政の関与がなく、合意形成が得られれば比較的短期間で法人設立が可能である。
* 税制上の優遇措置: 非営利型法人に該当すれば、収益事業以外は非課税となり、機構集積協力金も非課税となる。
* 事業の柔軟性: 定款に定めることで、農業以外の事業(商工業等)も実施でき、地域の実情に応じた多角的な事業展開が可能である。
* 地域ニーズへの対応: 住民要望の多い「買い物支援などの高齢者への移動支援」や「子ども達の見守り活動」なども、一般社団法人であれば、事業として実施できる可能性が広がる。これは、地域の助け合い活動を組織化し、持続可能なものにする大きな一歩となる。
* 資金調達の多様性: 定款に定めることで、基金の受け入れが可能であり、商工業者からの資金調達も可能である。
これらの優位性から、特に中山間地域や条件不利地域において、総合的な地域づくりに取り組む上で適した方式と言える。また、農地集積・集約化を促進するための有効な手段としても期待される。
2-1 一般社団法人を「特定法人」とし、非課税メリットを最大限活用
さらに、一般社団法人を「特定法人」とすることで、物品貸付業や請負業を非課税事業として運営できる可能性が広がる。特定法人とは、社員総会における議決権の総数の二分の一以上の数が地方公共団体により保有されている公益社団法人又は非営利型法人に該当する一般社団法人で、その業務が地方公共団体の管理の下に運営されているものである(資料21ページ上段参照)。この方式なら、地方公共団体が議決権の過半数を保有することで、事業の公益性を担保し、事業の安定性・継続性を高めることが期待される。例えば、農機具の貸し出しや農作業の請負といった、地域農業を支える事業を非課税で実施できるため、より効率的かつ持続的な運営が可能となる。
2-2 認定農業者への近道!基盤法第23条の活用
「地域まるっと中間管理方式」で設立した一般社団法人が認定農業者となるためには、通常必要な「所得目標」をクリアせずとも、基盤法第23条を活用する方法がある。これは、地権者の三分の二以上が構成員となる農用地利用改善組合を組織し、一般社団法人を特定農用地利用規程で定める特定農業法人に位置づけ、市町村から認定を受けるものである(資料15ページ下段参照)。この方法であれば、所得目標の設定が不要となるため、認定農業者へのハードルが大きく下がる。ただし、前例が少ないため、行政が消極的になる場合があり、農業者側から積極的に働きかけることが重要であると、講師の可知氏も講演内で強調している。
3. 各地の優良事例
3-1 一般社団法人押井営農組合(愛知県豊田市)
中山間地域の典型例として、極めて条件の悪い圃場(一番広い田んぼでも面積が1反(約1,000㎡))を抱える同地区では、担い手の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっていた。「私益を追求するのではなく、地域を守る」という理念のもと、一般社団法人を設立。消費者が生産者に米代金を前払いする「源流米ミネアサヒCSAプロジェクト」を展開し、生産者と消費者を直接結びつけることで、農業経営の安定化を実現(1俵3万円の支払いのうち、2.5万円以上が農家の手取り)している。また、Iターン者の受け入れにも成功し、若い労働力の確保にも成果を上げている。
3-2 一般社団法人TARI(鳥取県日南町)
中山間地域に位置する多里地区では、担い手不足が深刻化する中、地域農業を守るための一手として一般社団法人を設立。総務省の集落支援員制度や地域おこし協力隊制度を有効活用し、人材確保と事業運営の安定化を図っている。新規参入者が代表理事を務め、Uターン女性を事務員(3年間は集落支援員制度を活用)として雇用(地域の想いとして、地域の維持が一番、担い手だけでは農地は守れない、自作希望農家を含め多くの協力が必要)するなど、多様な人材が活躍している。また、地域おこし協力隊の任期終了後(令和4年度から受入、令和6年度から鳥取大出身者の後継者としてインターンを実施)に、集落支援員として活動を継続するアイデアは、地域への定着を促す有効な手段として注目され、令和5年度は、赤色で示した5事業(交付金事業を1事業として)に取り組んでいる。
3-3 一般社団法人大野もっこりの郷(岩手県西和賀町)
豪雪地帯の中山間地域である大野地区では、機械化の推進が課題となっていた。任意組合では機械所有が困難であったため、「地域まるっと中間管理方式」を活用した一般社団法人を設立。行政区(大野区)と連携した農村RMO的な活動を展開し、地域内の合意形成をスムーズに進め、コンバイン、トラクター、田植え機等の機械投資を実現。直接経営面積の拡大にも成功している。
3-4 一般社団法人アグリYODOE(鳥取県米子市)
平坦地でありながら、小区画(約10a区画)、排水性不良、農道未整備といった悪条件の農地を抱える淀江地区では、基盤整備と「地域まるっと中間管理方式」を組み合わせる(まるっと+ほ場整備)ことで、担い手への農地集積・集約化を実現した。基盤整備により、担い手の営農環境を劇的に改善し、生産性・収益性の向上に成功。自作希望農家の意向を尊重しつつ、将来的な担い手不足にも対応できる体制を構築。さらに、隣接地区との連携も視野に入れている。整備は2ha区画、自動操舵機能付き農機やドローン導入、パイプライン化、暗渠排水の整備を行い、水田畑利用を可能に。平坦地なのに圃場条件の悪い地域で、圃場整備を上手く取り入れた「地域まるっと中間管理方式」で担い手への集団化率をクリアし、地元負担ゼロを実現。
3-5 一般社団法人ライステラス大谷(福島県磐梯町)
美しい棚田が広がる中山間地域で、まだ担い手農家がいるうちに、「将来のために、今動こう!」と一般社団法人を設立。リーダー・サブリーダーの連携体制を組み、地域おこし協力隊ともタッグを組んで、後継者・新規就農者の育成に挑戦中。耕作者同士の農地交換も進め、農地集約もスムーズに。上西連全体の農地を維持管理できる受け皿組織の必要性を認識しての取り組み。
4. 地域農業の持続可能性を高めるための方策
優良事例から、「地域まるっと中間管理方式」を成功させるためには、以下の点が重要であることが示唆される。
* 地域の実情に合わせた制度設計: 中山間地域、平坦地など、地域の特性や課題に応じて、柔軟に制度を設計する。
* 基盤整備との連携: 特に条件不利地域では、基盤整備と組み合わせることで、農地の集積・集約化を効果的に進めることができる。
* 外部支援制度の活用: 総務省の集落支援員制度や地域おこし協力隊制度などを活用し、人材確保や事業運営の安定化を図る。
* 多様な担い手の確保: 新規就農者だけでなく、自作希望農家、高齢者、地域おこし協力隊、集落支援員、半農半Xなど、多様な人材を地域農業の担い手として確保・育成する。
* 生産者と消費者を直接結ぶ仕組みづくりも有効である。(例:一般社団法人押井営農組合の「源流米ミネアサヒCSAプロジェクト」)
* 地域住民の主体的な参画: リーダー・サブリーダーの育成、地域住民の合意形成、継続的な話し合いが不可欠である。
* 地方公共団体の積極的な関与: 「特定法人」制度などを活用し、地方公共団体が一定の責任を持つことで、事業の信頼性を高め、非営利型一般社団法人のメリットを最大限引き出す。
* 行政への働きかけ: 基盤法第23条を活用した認定農業者取得など、先進事例を参考に、行政に対して積極的に働きかけ、制度活用のハードルを下げる。
結論
「地域まるっと中間管理方式」は、地域農業の維持・発展に向けた有効な手段の一つである。特に、一般社団法人(非営利型)を活用することで、担い手と自作希望農家の共存、税制上の優遇措置、事業の柔軟性、資金調達の多様性といったメリットを享受できる。さらに、「特定法人」制度の活用や、基盤法第23条に基づく認定農業者取得など、制度を熟知し、上手に活用することで、その可能性はさらに広がる。各地の優良事例を参考に、地域の実情に合わせた制度設計と、関係者の主体的な参画を通じて、その効果を最大限に発揮することが期待される。今後も、全国各地での実践事例を蓄積・共有し、「地域まるっと中間管理方式」の更なる普及と発展を目指すことが重要である。
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