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オークショットの名言集 1901-1990

  • 執筆者の写真: 石田卓成
    石田卓成
  • 3月17日
  • 読了時間: 48分

マイケル・オークショット


【保守主義について】

1.「保守的であるということは、変更に反対することではなく、特定の種類の変更を好むことである。」 (政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「変化は絶対にダメ!」と考えるわけではありません。むしろ、「どんな変化でも良い」というわけではなく、「こういう変化なら良いけど、こういう変化はちょっと…」というように、変化の「質」を大切にする考え方です。例えば、社会の仕組みを根っこから急に変えてしまうような変化よりも、少しずつ、ゆっくりと変わっていく変化を好むのが保守主義の特徴です。


2.「保守であるということは、変更を認めないことではなく、慣れ親しんだものを好むこと、十分に試されていないものよりも試されたものを好むこと、神秘よりも事実を好むこと、計画されたものよりも偶然を好むこと、全体的なものよりも限定的なものを好むこと、完璧さよりも便利さを好むこと、夢のような至福よりも現在の笑いを好むこと、未知の楽園の約束よりも現在の悲しみを好むことである。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:これは、保守主義の考え方をとても分かりやすくまとめた有名な言葉です。保守主義は、変化をただ否定するのではなく、自分たちがよく知っているもの、これまでやってきて上手くいったものを大切にします。まだ結果が分からない新しいものよりも、実際に試されてきたものを信頼します。また、根拠がはっきりしない話よりも、事実に基づいた考え方を好み、きっちり計画されたものよりも、自然の流れの中で生まれたものを尊重します。さらに、全てが完璧な理想よりも、実際に使えて便利なものを重視し、夢のような幸せよりも、今のちょっとした楽しいことを大切にする。そして、まだ見ぬ理想の場所の約束よりも、たとえ今は悲しみがあっても、現実をしっかりと見つめる姿勢が保守主義だと言っています。


3.「保守主義は、未来を予測し、計画し、制御できるという幻想を抱かない。それは、未来は不確実であり、予測不可能であり、そして常に驚きに満ちていることを知っている。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「未来はきっとこうなる!」と決めつけたり、未来を完全に思い通りにできると考えたりしません。未来は誰にも正確には分からず、予想外のことが起こるものだと知っています。だからこそ、未来を完璧にコントロールしようとする考え方(理性主義)とは違い、保守主義は未来に対して慎重な態度をとります。未来は人間の頭で考えた計画通りにはいかない、という現実的な考えが、保守主義の慎重さにつながっているのです。


4.「保守主義は、完璧な社会や理想的な政治体制を追求しない。それは、現実の社会は常に不完全であり、問題に満ちていることを知っている。そして、政治の目的は、完璧さを達成することではなく、むしろ、最悪の状態を回避し、可能な限り最善の状態を維持することである。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「こんな社会になったら最高だ!」という理想の社会を目指しません。現実の社会には、常に何かしらの問題があるものだと考えています。だから、政治の目標は、完璧な社会を作るという大きなものではなく、「これ以上悪くならないようにする」とか、「今ある良い状態をできるだけ長く続ける」といった、現実的なところにあると考えます。夢のような社会を目指すのではなく、今の社会の中で、できる範囲でより良くしていくという考え方です。


5.「保守主義は、熱狂的な情熱や壮大な計画を疑う。それは、人間の理性には限界があり、社会は複雑で予測不可能であることを知っている。したがって、性急な改革や急進的なな変革は、しばしば意図せぬ悲劇的な結果を招くと考える。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「絶対にこうするんだ!」という強い気持ちや、社会全体を大きく変えるような計画には、慎重な姿勢をとります。なぜなら、人間の頭で考えられることには限界があり、社会は複雑で、未来を正確に予測することはできないからです。例えば、フランス革命のような、自由や平等を理想に掲げた大きな社会変革でしたが、多くの混乱や暴力も伴いました。このように、理想を追い求めて急激に変革しようとした動きは、結果的に社会の混乱や悲劇につながったと考えることがあります。オークショットは、このような歴史を念頭に、急ぎすぎた改革は予期せぬ悪い結果を生む可能性があると考え、人間の理性を過信せず、少しずつ、慎重に進むことを重視するのが保守主義の特徴だと述べています。ただし、オークショットがフランス革命そのものを批判したわけではなく、一般的な「急ぎすぎた改革」や「理性主義的な革命」を問題視している点に注意が必要です。


6.「保守主義は、自由を尊重するが、抽象的な自由や形而上学的な自由ではなく、具体的な自由、すなわち、慣習、制度、そして法によって支えられた秩序ある自由を重視する。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、自由というものを大切にしますが、「誰にも邪魔されずに何でもできる!」といった、現実離れした自由を理想とするわけではありません。そうではなく、社会のルールや法律、昔からの習慣といった、みんなが守るべきものがある中で認められる自由を重視します。つまり、社会の秩序があってこそ、一人ひとりの自由が守られるという考え方です。


7.「保守主義は、共同体を重視するが、全体主義的な集産主義ではなく、自発的な結社、多元的な社会、そして個人の自由を尊重する共同体を重視する。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

保守主義は、みんなで助け合う「共同体」を大切にしますが、国や社会が全てを決めて、個人の自由を奪うような考え方(国が非常に強い力を持っていて、個人の自由よりも社会全体の利益を優先するような考え方)には反対します。そうではなく、人々が自分たちで集まって作るグループや、色々な考え方や価値観が共存する社会、そして何よりも個人の自由を大切にするような共同体を重視します。みんなで協力することは大切だけれど、一人ひとりの自由も同じくらい大切にするという考え方です。「全体主義的な集産主義」とは、国の権力が極端に強くなり、個人の自由や権利が無視され、社会全体の利益という名の下に人々が画一的に管理・統制されるような、恐ろしい考え方だと理解してください。


8.「社会は、計画によって作られるものではなく、習慣によって育まれるものである。」(政治における合理主義「政治を語る」) 

解説:社会は、完璧な計画によって作られるのではなく、人々が日々の生活の中で自然と作り上げてきた「習慣」によって形作られると考えます。はっきりとしたルールとして書かれていないことや、昔からそうしてきたというやり方など、長い時間をかけて培われてきた「習慣」が社会の基礎となります。そのため、急激な変化よりも、これまでの習慣を大切にしながら、時間をかけて社会を良くしていくことを重視します。


9.「保守主義は、感謝の念から生まれる。それは、過去の世代から受け継いだもの、すなわち、社会の制度、慣習、そして文化に対する感謝の念であり、これらの遺産を尊重し、次世代に引き継ごうとする意志である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義の根本には、「これまで社会を作ってきた人たちへの感謝の気持ち」があります。今の社会にあるルールや仕組み、昔からの習慣、文化などは、過去の世代が長い時間をかけて作り上げてきた大切なものです。保守主義は、これらの先人たちの努力に感謝し、その良いところを大切にして、次の世代にきちんと伝えていこうと考えます。歴史や伝統を敬う気持ちが、保守主義の原動力になっているのです。


10.「保守主義は、謙虚さから生まれる。それは、人間の理性には限界があり、社会は複雑で予測不可能であることを認識する謙虚さであり、したがって、性急な改革や急進的な変革を避け、漸進的な改善を追求する慎重さである。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「人間の頭で考えられることには限界がある」という謙虚な気持ちから生まれます。社会はとても複雑で、未来はどうなるか誰にも正確には分かりません。だからこそ、すぐに社会を大きく変えようとするのではなく、少しずつ、注意深く改善していくことを重視します。人間の理性を過信せず、現実の複雑さを素直に受け止める姿勢が、保守主義の慎重さにつながっているのです。


11.「保守主義は、理論よりも実践を、抽象よりも具体を、普遍よりも特殊を、そして形式よりも内容を重視する。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、頭の中で考えられた理屈(理論)よりも、実際にやってみてどうだったかという経験(実践)を大切にします。また、あいまいな考え方(抽象)よりも、具体的な事実を重視し、「どんな場合でも当てはまる」という普遍的な考え方よりも、それぞれの特別な状況に合わせた考え方をします。そして、見た目やルール(形式)よりも、実際の中身や意味(内容)を重視する傾向があります。


12.「保守主義は、過去を尊重するが、過去に固執するわけではない。それは、過去の経験から学び、過去の知恵を活用し、過去の遺産を未来に引き継ぐことを重視するが、過去の束縛に囚われることを拒否する。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、過去の出来事や先人たちの知恵を大切にしますが、過去のやり方にいつまでも縛られるわけではありません。過去の経験から学び、良いところは未来に引き継いでいくことを重視しますが、今の時代に合わない古い考え方に固執することは避けます。過去と現在、そして未来はつながっていると考え、過去の良いものを活かしながら、変化していく社会に対応しようとするのが保守主義です。


13.「保守主義は、秩序を重視するが、権威主義的な秩序ではなく、自由と両立する秩序、すなわち、自発的な協力、慣習的なルール、そして限定的な政府によって支えられた秩序を重視する。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、社会の秩序を大切にしますが、国が力で国民を抑えつけるような秩序(権威主義的な秩序)は好みません。そうではなく、人々が自主的に協力し合ったり、昔からの習慣を守ったり、必要最小限の役割を果たす政府によって支えられるような、自由と両立する秩序を重視します。みんなが自由に活動できる社会でありながら、きちんとルールも守られる、バランスの取れた状態が良いと考えます。


14.「保守主義は、変化を恐れるのではなく、無分別な変化、性急な変化、そして全体的な変化を恐れる。それは、漸進的な変化、慎重な変化、そして限定的な変化を好み、社会の安定と秩序を損なわない範囲での変化を歓迎する。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、変化すること自体を怖いと思っているわけではありません。ただ、よく考えられていない変化や、急すぎる変化、社会全体を大きく変えてしまうような変化には慎重です。そうではなく、少しずつ、ゆっくりとした変化や、社会の安定や秩序を壊さない範囲での変化を好みます。社会が混乱しないように、慎重に変化していくことを望んでいるのです。


15.「保守主義は、完成されたイデオロギーではなく、むしろ、常に変化し、進化し続ける伝統である。それは、過去の経験から学び、現在の状況に適応し、未来の課題に対応していく、生きた思想である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「これが絶対正しい!」というような、完成された考え方(イデオロギー)ではありません。むしろ、昔から受け継がれてきた「伝統」のようなもので、時代に合わせて常に変化し、進化していくものです。過去の経験から学び、今の社会に合わせてやり方を変え、これから出てくるであろう問題にも対応していこうとする、生きている考え方なのです。


16.「保守主義は、イデオロギーではなく、むしろ気質である。それは、特定の政治的信条の集合ではなく、むしろ、変化に対する特定の態度、すなわち、慣れ親しんだものを好み、十分に試されていないものよりも試されたものを好む態度である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、決まったルールブックのようなもの(イデオロギー)というよりは、「こういうものが好き」「こういうやり方が落ち着く」といった、個人の性格や傾向(気質)に近いものです。特定の政治的な信念の集まりというよりも、変化に対して、「今までやってきたことのある、安心できるものが良いな」とか、「まだよく分からない新しいものより、ちゃんと試されてきたものの方が信頼できるな」といった、態度や考え方を指します。


17.「保守主義は、普遍的な原理や抽象的な理論から出発するイデオロギーではなく、特定の状況に対する具体的な態度である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「どんな時でも絶対に正しい」というような原理や、頭の中で考えられた抽象的な理論から始まる考え方ではありません。そうではなく、目の前にある具体的な状況をよく見て、「今、何が大切か」「どうするのが一番良いか」を経験に基づいて判断する、状況に応じた態度なのです。決まったルールに従うのではなく、その時々の状況に合わせて柔軟に対応するのが保守主義の特徴です。


18.「保守主義は、イデオロギーではなく、むしろ、特定の種類の会話である。それは、社会の成員が、共通の過去を共有し、共通の現在を生き、共通の未来を築いていくための、継続的な対話である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、教えや信条の集まり(イデオロギー)というよりも、社会に生きるみんなで行う「会話」のようなものです。私たちは、同じ歴史を共有し、今を一緒に生きて、これから先の未来をどうしていくかを話し合っています。保守主義は、この終わりのない会話を通じて、お互いの理解を深め、社会を維持していくプロセスだと考えられます。社会は、固定されたものではなく、みんなの対話によって作られ、維持されていくものなのです。


19.「保守主義は、変化を完全に拒否するわけではないが、変化を常に注意深く、慎重に、そして漸進的に行うべきだと考える。それは、性急な変化は、しばしば予期せぬ副作用をもたらし、社会の安定を損なうことを知っている。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、変化を全て拒否するわけではありません。しかし、変化を起こすときは、いつも注意深く、慎重に、そして少しずつ進めるべきだと考えます。なぜなら、急いで変化させようとすると、予想もしなかった悪い影響が出てきて、社会が不安定になることがあるからです。時間をかけて、ゆっくりと変化していくのが良いと考えています。


20.「保守主義は、特定の政治的目標や理想郷を目指す運動ではない。それは、むしろ、特定の種類の社会、すなわち、慣れ親しんだ社会、秩序ある社会、そして自由な社会を維持しようとする傾向である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「将来はこんな素晴らしい社会にしよう!」というような目標に向かって進む運動ではありません。むしろ、今ある社会の良いところ、つまり、私たちが慣れ親しんでいて、ルールが守られていて、自由に暮らせる社会を、これからも維持していこうとする考え方です。現状の良いところを守っていくことを大切にしています。


21.「保守主義は、特定の政治的綱領や政策を支持するものではない。それは、むしろ、政治的活動の特定の様式、すなわち、慎重で、漸進的で、そして実践的な様式を好む。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:保守主義は、「この政策が良い!」とか「この法律を絶対に通すべきだ!」といった、具体的な政策を支持するものではありません。そうではなく、政治を行う上での「やり方」や「スタイル」を重視します。例えば、何か新しいことを始めるときは、慎重に考え、少しずつ進め、現実的に効果がある方法を選ぶといったやり方を好みます。


22.「保守主義者は、船が沈まないようにするために、船の修理をする。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説: オークショットは、保守主義者を、航海中の船をメンテナンスする乗組員に例えています。社会という船が沈没しないように、問題があれば(例えば、どこかに穴が開いたり、壊れたりしたら)それを修理し、安全に航海を続けられるように努めます。保守主義は、社会全体を完全に作り変えるのではなく、既存の社会の良いところを維持し、問題点を少しずつ改善していくことを重視する考え方です。


【政治について】

23.「政治において、最善の策は、多くの場合、最小限の行動である。」(政治における合理主義)

解説:オークショットは、政治においては、あれこれと手を加えすぎるよりも、必要最低限のことだけを行う方が良い結果を生むことが多いと考えます。社会は複雑で、人間の理性には限界があるため、良かれと思って行ったことが、かえって悪い結果を招くこともあるからです。慎重に、控えめに行動することが、政治においては賢明な選択となる場合が多いのです。


24.「政治とは、共通の関心事を追求するのではなく、異なる関心事を持つ人々が共に生きるための取り決めである。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:オークショットによれば、政治の本質は、全員が同じ興味や関心を追い求めることにあるのではなく、むしろ、一人ひとりが異なる利害や優先事項を抱える中で、それでも共同生活を可能にするための調整や合意を築くことです。「関心事」とは個々の具体的な願いや立場を意味し、多様な人々が衝突せずに暮らせるよう、政治は具体的なルールや仕組みを提供するものだと考えています。


25.「政治とは、教科書から学ぶものではなく、会話の中で育まれるものである。」(政治における合理主義「政治教育」)

解説:政治は、教科書に書かれた理論だけで理解できるものではなく、人々が日々の対話を通じて経験的に学ぶものだとオークショットは考えます。異なる意見を交わし、議論を重ねる中で、政治的な判断力や実践的な知恵が養われるとされます。つまり、生きた「会話」こそが、最良の政治教育の場であるという主張です。


26.「法とは、道徳的な理想を押し付けるものではなく、人々の行動を調整するための枠組みを提供するものである。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説: オークショットは、法律の役割は、「これが正しい生き方だ!」というような道徳的な理想を人々に強制することではないと考えます。そうではなく、人々が社会の中で互いに衝突することなく、自由に活動できるように、行動のルールや枠組みを提供することだと捉えています。法律は、社会生活を円滑にするための道具であり、個人の道徳観に立ち入るものではないという考え方です。


27.「政治とは、共通の目的を追求するのではなく、様々な目的を追求する人びとが共存するための取り決めである。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:オークショットは、政治を単一の大きな目標に向かう運動とは見なさず、むしろ、人々がそれぞれ独自の目指すものや価値観を持っていても、互いに調和しながら生きていけるようにするためのルール作りだと定義します。政治とは、多様な意図や志向が交錯する社会で、それらを無理やり統一するのではなく、共存を支える現実的な手段だと捉えているのです。


28.「政治的活動は、目的を達成するための手段ではなく、それ自体が目的のない追求である。」(政治における合理主義「政治教育」)

解説:オークショットは、政治を単一の大きな目標に向かう運動とは見なさず、むしろ、人々がそれぞれ独自の目指すものや価値観を持っていても、互いに調和しながら生きていけるようにするためのルール作りだと定義します。政治とは、色々な考えや目標を持った人々が入り混じっている社会で、それらを無理やり統一するのではなく、共存を支える現実的な手段だと捉えているのです。


29.「政治的理論は、政治的実践を指導するためのルールや原理の体系ではなく、むしろ政治的実践を理解するための視点である。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:政治の理論は、「政治の現場でどうすれば良いか」という具体的なルールや原則を教えてくれるものではありません。そうではなく、実際に政治が行われている状況を、より深く理解するための「見方」や「考え方」を与えてくれるものだとオークショットは考えます。理論は、実践のためのマニュアルではなく、実践を理解するための道具なのです。


30.「政治的活動は、つねに『すでにそこにある』社会において開始される。それは、完全に新しい始まりを創造することではなく、むしろ、既存の社会秩序の連続性を維持し、修復し、改善することを目指す。」(政治における合理主義)

解説:政治の活動は、いつも「すでに存在する」社会の中で始まります。社会をゼロから作り直すような革命的なものではなく、今ある社会の秩序を維持したり、壊れたところを直したり、少しずつ良くしていくことを目指すものだとオークショットは考えます。社会は、過去から現在へと続くものであり、政治は、その流れを大切にしながら、より良くしていく役割を担うのです。


31.「政治的議論は、理性的な説得だけではなく、情熱、利害、そして偏見によっても影響を受ける。したがって、政治的合意は、常に一時的で、不完全で、そして脆弱なものである。」(政治における合理主義「政治的言説」)

解説:政治の議論は、論理的な説明だけで決まるわけではありません。人々の感情や、自分の利益、そして偏った考え方も影響します。だからこそ、政治的な合意は、完全に納得のいくものではなく、いつも一時的なもので、少しのことでもろく壊れてしまうようなものです。


32.「政治的指導者は、技術者や科学者ではなく、むしろ、航海士や庭師のような存在である。彼らは、社会を設計したり、制御したりするのではなく、むしろ、社会の成長を促し、方向性を導き、そして危険から守る役割を担う。」(政治における合理主義)

解説:政治のリーダーは、まるで機械を作る技術者や、実験をする科学者のように、社会を設計したり、完全にコントロールしたりするわけではありません。むしろ、船を操縦する航海士や、植物を育てる庭師のように、社会が成長するのを助け、進むべき方向を示し、危険から守る役割を果たすとオークショットは考えます。


33.「政治的活動の成功は、特定の結果を達成することではなく、むしろ、社会的な秩序と調和を維持し、紛争を抑制し、そして人びとが共に平和に暮らせるようにすることによって測られるべきである。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:政治の活動が成功したかどうかは、「〇〇という目標を達成した!」といった具体的な結果で測るべきではありません。むしろ、社会全体の秩序が保たれ、人々が仲良く平和に暮らせる状態が続いているかどうかで判断するべきだとオークショットは言います。


34.「政治に最終的な目的はない。それは、秩序を維持する過程そのものである。」(政治における合理主義「ロゴスとテロス」)

解説:「ロゴス」(理性)と「テロス」(目的)という考え方に縛られた政治の見方を否定し、政治を終わりがない、常に続いていくプロセスだと考えます。「ロゴス」は理性や論理、「テロス」は目的や目標という意味です。


35.「政治的活動は、言葉のやり取りを通じて行われる。それは、議論、説得、交渉、そして妥協のプロセスであり、言葉を通じて共通の理解を築き、共通の行動を調整していく。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:政治の活動は、主に言葉を使ったやり取りによって進められます。それは、お互いに意見を言い合ったり(議論)、相手を自分の考えに納得させたり(説得)、条件を出し合ったり(交渉)、お互いに譲り合ったり(妥協)するプロセスです。言葉を通じて、みんなが共通して理解できることを作り上げ、一緒に何をするかを決めていくのです。


36.「政治とは、強制ではなく、説得によって成り立つ。」(政治における合理主義「政治を語る」) 

解説:政治は、権力によって人々を強制するのではなく、対話を通じて納得させることで成り立つべきだとオークショットは考えます。異なる意見を持つ人々が、互いに議論し、理解し合うことを通じて、合意を形成していくプロセスが重要だとされます。つまり、力による支配ではなく、言葉による説得が政治の本質であるという主張です。


37.「政治的議論は、単なる情報交換ではなく、むしろ、異なる視点や意見が衝突し、対立し、そして相互に影響し合う場である。そのような議論を通じて、私たちは自己の考えを吟味し、他者の考えを理解し、そしてより洗練された判断へと到達することができる。」(政治における合理主義「政治的言説」)

解説:政治の議論は、ただ情報を伝え合うだけでなく、それぞれ違う考え方や意見を持った人がぶつかり合い、時には対立しながらも、お互いに影響を与え合う場です。そのような議論を通して、私たちは自分の考えを深く見つめ直し、他の人の考えを理解し、より良い判断をする力を身につけることができるのです。


38.「政治的言説は、結論を出すためではなく、理解を深めるためにある。」(政治における合理主義「政治的言説」)

解説:政治的な議論は、唯一の正しい答えや最終的な結論を出すことを目的とするのではなく、お互いの立場や考え方を深く理解するためのプロセスであるとオークショットは捉えます。多様な意見が交わされる中で、相互理解が深まり、より良い解決策が見つかる可能性が開かれると考えます。議論は、決着ではなく、理解の深化を目指すべきだという主張です。


39.「政治的合意は、理性的な説得によってのみ達成されるものではない。それは、感情、信頼、そして相互尊重といった、より非合理的な要素にも依存している。したがって、政治的合意は、常に繊細で、壊れやすく、そして不断の努力によって維持されなければならない。」(政治における合理主義「政治的言説」)

解説:政治の世界で合意に達するには、論理的な説明だけでは不十分です。お互いの感情や信頼感、そして相手を尊重する気持ちといった、理屈だけでは説明できない要素も大切です。だからこそ、政治的な合意は、いつも壊れやすく、維持するためには絶え間ない努力が必要なのです。


40.「言葉は、政治の道具であり、同時にその限界でもある。」(政治における合理主義「政治的言説」)

解説: 政治は言葉を通じて行われますが、言葉は、完全に人の考えや感情を表現できるわけではなく、誤解を生むこともあります。オークショットは、言葉が政治を進めるための道具であると同時に、言葉の持つ曖昧さや不完全さが、政治の限界や難しさをもたらすとも指摘します。言葉の力と限界を認識することの重要性を示唆しています。


41.「政治的リーダーシップは、強力な意志やカリスマ性によって発揮されるものではなく、むしろ、状況を的確に理解し、適切な判断を下し、そして人びとを説得し、協力を引き出す能力によって発揮される。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:政治のリーダーシップは、「俺が引っ張っていく!」という強い意志や、人を惹きつける魅力(カリスマ性)だけで発揮されるものではありません。むしろ、その時の状況を正確に理解し、正しい判断を下し、そして人々に自分の考えを伝え、協力してもらう力によって発揮されるのです。


42.「大衆は、政治的判断の主体ではなく、政治的指導の対象である。」(政治における合理主義「代表民主主義における大衆」)  

解説:オークショットは、全ての人々が直接政治的な判断を行うのではなく、選ばれた指導者が大衆を導くべきだと考えます。大衆は感情に流されやすく、専門的な知識も不足しているため、政治は、知識と経験を持つ指導者に委ねられるべきだという考えです。


43.「政治的活動の最終的な目的は、特定のエンドステートを達成することではなく、むしろ、文明的な対話の継続を可能にすることである。政治は、終わりのない会話であり、その目的は、会話を続けること、つまり、人びとが共に平和に、そして有意義に生きることを可能にすることにある。」(政治における合理主義)

解説:政治の活動が最終的に目指すのは、「〇〇という理想の社会を作る!」といった具体的な目標(最終的な目標地点)を達成することではありません。むしろ、オークショットが「会話」を人間の共同生活の基盤とみなすように、人々が理性的に話し合いを続けられる状態を保つことです。彼にとって政治は「会話そのもの」であり、その目的は会話を続けること、つまり、人々が平和に、そして意味のある人生を共に生きられるようにすることにあります。


44.「政治とは、人間の欲望を満足させるための装置ではなく、むしろ欲望の衝突を管理するための取り決めである。」(政治における合理主義「政治を語る」)

解説:政治は、「あれも欲しい、これも欲しい」という人々の様々な欲望を全て叶えてくれる魔法の道具ではありません。むしろ、それぞれの欲望がぶつかり合う中で、社会が混乱しないように、ルールを作って管理するための仕組みだとオークショットは考えます。


45.「政治的活動は、目的を達成するための手段ではなく、むしろ目的のない追求である。」(政治における合理主義)

解説:政治の活動は、「これを達成したら終わり!」というような、目標を達成するための手段ではありません。むしろ、目標がなくても、社会の秩序や平和を保ち続けるために、常に続けていく活動そのものに意味があると考えます。


46.「政治とは、無制限で果てしない海を航海するようなものである。そこには避難港もなければ、海底に錨を下ろすことも、出発点もなければ、予定された目的地もない。なすべきことは、ただ浮き続けることだけである。」(政治における合理主義)

解説:オークショットは政治を、終わりなき大海原の航海に例えます。そこには、目指す港も、固定する錨も、出発点も、決まった目的地もありません。不確実な状況の中、政治家は過去の経験や慣習から学び、問題に対処し、社会という船を維持します。政治の目的は特定の目標達成ではなく、社会の安定と秩序の維持であり、それは、明確な答えのない問いに対応し続ける、終わりなき営みです。この比喩は、政治を理想論ではなく、現実的で実践的な活動として捉える重要性を示しています。


【理性主義について】

47.「理性主義とは、知識の形態の一つであり、それは実践的知識を軽視し、理論的知識のみを真の知識とみなす傾向である。」(政治における合理主義)

解説:理性主義というのは、知識の考え方の一つで、「実際にやってみて得た知識(実践的知識)」よりも、「頭の中で考えられた理論的な知識」の方が重要だと考える傾向のことです。オークショットは、この理性主義が、経験や昔からの習慣といった、実際に役立つ知識を軽んじていると批判しました。


48.「政治的理性主義者は、政治を技術的な問題として捉え、普遍的な原則や計画に基づいて社会を改造できると信じている。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の人は、政治をまるで機械を修理するような「技術的な問題」だと考えます。「こういう原則があるから、この計画を実行すれば、社会はもっと良くなるはずだ!」と信じて、社会全体を設計し直そうとします。オークショットは、このような考え方は、現実の複雑さや、何が起こるか分からない未来を無視していると警告しました。


49.「普遍的な計画とは、具体的な場所を持たない計画であり、したがって、どこにも適用できない計画である。」(政治における合理主義「バベルの塔」)

解説:「普遍的な計画」とは、「どんな場所でも、どんな状況でも当てはまる」という抽象的な計画のことです。オークショットは『バベルの塔』で、理性主義者が特定の場所や歴史的な背景、具体的な事情を無視した「青写真」を夢見ることを批判しました。例えば、ある社会の伝統や習慣、歴史的な背景を考えずに、一般的な理論だけで社会を変えようとしても、現実の多様性に合わず失敗すると考えます。政治は、こうした抽象的な設計ではなく、それぞれの土地の事情や歴史に根ざした活動であるべきだと彼は主張しています。「伝統や習慣」に加えて「歴史的な背景」や「具体的な事情」を重視する視点が、彼の意図をより明確に示しています。


50.「イデオロギーとは、政治的知識の代用品である。」(政治における合理主義)

解説:イデオロギーというのは、「世の中はこうあるべきだ!」という、特定の考え方のまとまった体系のことです。オークショットは、イデオロギーを、現実の複雑さや多様性を無視して、単純な考え方に当てはめようとするものだと批判的に捉えています。政治においては、イデオロギーのような簡単な知識で済ませるのではなく、歴史的な経験や、実際にやってみて分かった知恵に基づいた、もっと深く、状況に合った知識が必要だと考えました。


51.「政治的理性主義の特徴は、政治的知識に対する特定の態度である。それは、私はそれを「技術」と呼ぶだろうが、それは、政治的活動は、普遍的なルール、原理、または原理の集合に還元できると想定する。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の大きな特徴は、政治の知識に対するある特定の考え方です。オークショットはそれを「技術」と呼びましたが、それは、「政治は、どんな場合でも当てはまるルールや原則の集まりに分解できる」と考えることです。つまり、政治をまるで科学技術のように、一定のルールに従って操作すればうまくいく、と考えるのです。オークショットは、このような考え方は政治の本質を見誤っていると批判しました。政治は、単純な技術ではなく、もっと複雑で、状況によってやり方を変える必要があると考えています。


52.「合理主義とは、独立した思考の代わりに、技術の支配を置くことである。」(政治における合理主義)

解説:オークショットは、理性主義を、自分で深く考えること(独立した思考)よりも、決まったやり方やマニュアル(技術)に従うことを良しとする考え方だと批判します。理性主義は、複雑な問題を単純化し、効率的に解決する方法を求めるあまり、本来、人間が持つべき柔軟な思考力や判断力を失わせてしまう危険性があると考えています。


53.「政治的知識は、技術的知識と実践的知識の二つの種類に分けられる。技術的知識は、ルール、原理、原理の集合として公式化できる知識であり、実践的知識は、公式化できない、習慣的で、状況に依存する知識である。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界で必要な知識には、大きく分けて二つの種類があるとオークショットは言います。一つは「技術的知識」で、これは教科書に書いてあるような、ルールや原則として言葉で説明できる知識です。もう一つは「実践的知識」で、これは言葉ではうまく説明できない、長年の経験や習慣を通して身につく、その時々の状況に合わせた知識です。理性主義は前者だけを重視しますが、オークショットは、特に政治においては後者の「実践的知識」がとても大切だと考えました。


54.「政治的理性主義者は、実践的知識の存在を否定するか、あるいはそれを技術的知識に劣るものとみなす傾向がある。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の人は、「実践的知識」のような、言葉で明確に説明しにくい知識を曖昧で信頼できないとみなし、「技術的知識」のようなルールや原則として整理された知識だけを高く評価します。例えば、オークショットは、政治家の長年の経験からくる勘や、職人が道具を使いこなすような暗黙の知恵を「実践的知識」と呼びます。彼は、政治においては、教科書的な知識だけでなく、こうした経験に基づく知恵や状況判断の能力が不可欠だと強調しました。


55.「政治的理性主義は、抽象的な原理から出発し、それを現実に適用しようとする演繹的な思考様式である。」(政治における合理主義)

解説:理性主義の考え方は、「まず頭の中で抽象的なルールや計画を作り、それを現実の世界に当てはめようとする(演繹的思考)」という特徴があります。例えば、「全ての人は平等であるべきだ」というルールを作って、それを現実の社会に適用しようとします。オークショットは、政治においては、このようなトップダウンの考え方だけでなく、現実の具体的な状況から学び、経験を積み重ねていく(帰納的思考)考え方も大切だと考えました。「演繹的思考」とは、一般的なルールから個別の結論を導き出す考え方です。「帰納的思考」とは、個々の具体的な事例から共通のルールを見つけ出す考え方です。


56.「行動が合理的であるためには、目的が明確である必要はない。むしろ、行動はその状況の中で意味を持つ。」(政治における合理主義「合理的行動」)

解説:オークショットは、行動の合理性は、事前に設定された明確な目的によって決まるのではなく、その行動が置かれた具体的な状況との関係性において決まると考えます。つまり、あらかじめ計画された目的を達成することだけが合理的ではなく、その場その場で、状況に合わせて適切に対応することもまた合理的であると主張します。状況との調和を重視する考え方です。


57.「政治における合理主義とは、伝統の知恵を無視し、抽象的な原理に固執することである。」(政治における合理主義)

解説:オークショットは、政治における合理主義を、昔から受け継がれてきた知恵(伝統)を軽んじ、頭の中で考え出した抽象的なルール(原理)にばかり頼る考え方だと批判します。伝統には、過去の人々の経験や試行錯誤が詰まっており、現実の政治において役立つ知恵が含まれていることが多いのに、合理主義はそれを無視してしまうのです。


58.「政治的理性主義は、過去の経験や伝統を軽視し、現在と未来のみを重視する傾向がある。」(政治における合理主義)

解説:理性主義の人は、過去の経験や昔からの習慣を、「もう古い考えだ」とか「非合理的だ」と考えて、あまり重要視しません。彼らが重視するのは、今と未来のこと、そして理性的な計画です。オークショットは、伝統は過去のガラクタではなく、私たちが今を生きるための大切な資源だと考え、歴史から学び、経験を積み重ねることの重要性を強調しました。


59.「合理主義者は、あたかも自分が白紙の状態から出発するかのように立ち、行動する。」(政治における合理主義)

解説:合理主義者は、まるで自分が何も書かれていない真っ白な紙(白紙の状態)からスタートするかのように考え、行動します。過去の歴史や伝統、経験を考慮せず、自分の理性だけを頼りに、ゼロから新しいものを作り出そうとするのです。オークショットは、このような態度は、現実の複雑さや、過去から学ぶことの重要性を見落としていると批判します。


60.「政治的活動は、常に特定の状況の中で行われ、特定の歴史的文脈に根ざしている。普遍的な原理や計画は、このような具体的な状況や文脈を無視するため、政治的活動の指針としては不適切である。」(政治における合理主義)

解説:政治の活動は、いつも特定の場所や時間、歴史の中で行われます。どんな状況でも当てはまるような普遍的なルールや計画は、それぞれの場所の特別な事情や、過去から積み重ねられてきた歴史を無視してしまうため、政治の道しるべとしては適切ではありません。政治的な判断や行動は、抽象的な理論ではなく、具体的な状況を深く理解し、歴史的な経験に基づいて行うべきだとオークショットは考えました。


61.「政治的知識は、書物から学ぶことができるものではなく、実践を通じて、経験を通じて、世代から世代へと受け継がれることによってのみ習得できるものである。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界で本当に役立つ知識は、教科書を読んだり、先生の話を聞いたりするだけでは身につきません。実際に政治の現場で活動したり、色々な経験をしたり、先人たちの知恵を世代を超えて受け継いだりすることによって、初めて身につくものだとオークショットは言います。政治は、机の上で学んだ知識だけでは対応できない、生きた知恵が必要な分野なのです。


62.「政治における理性主義者は、政治的知識の唯一の正当な形態は技術的知識であると信じているため、政治的活動は、技術的知識を適用する問題であると考える傾向がある。彼らは、政治的知識は、普遍的な原理、ルール、または計画の集合に還元できると想定し、政治的活動は、これらの原理、ルール、または計画を現実に適用することによって、社会を改善し、問題を解決することができると信じている。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の人は、「政治の知識で本当に正しいのは、ルールや原則として説明できる技術的な知識だけだ」と信じているので、政治の活動は、その知識を現実の世界に当てはめることだと考えがちです。彼らは、「政治の知識は、どんな場合でも当てはまるルールや計画の集まりに分解できる」と考え、「そのルールや計画を現実に適用すれば、社会はもっと良くなり、問題も解決できるはずだ」と信じています。オークショットは、このような考え方は、政治の本質を見誤り、現実の複雑さを無視していると批判しました。


63.「しかし、政治的知識のもう一つの形態、すなわち実践的知識が存在する。実践的知識は、ルールや原理の集合として公式化することができない知識であり、むしろ、習慣、先例、やり方として存在する。それは、明示的に教え込まれるものではなく、むしろ模倣と経験を通じて学び取られるものであり、特定の状況に依存し、常に変化し続ける。」(政治における合理主義)

解説:しかし、政治の世界に必要な知識には、もう一つの種類、「実践的知識」があるとオークショットは言います。これは、ルールや原則として言葉で説明することができない知識で、むしろ、昔からの習慣や、過去の事例、みんながやっているやり方として存在します。それは、誰かに教えてもらうというよりは、周りの人の真似をしたり、自分で経験したりする中で自然と身につくもので、特定の状況によって変わり、常に変化し続けています。オークショットは、政治においては、このような実践的知識こそが重要であり、理性主義者が重視する技術的知識だけでは不十分だと主張しました。


64.「政治的理性主義者は、政治的活動を、普遍的な計画や青写真に基づいて社会全体を再構築するプロジェクトとして捉える傾向がある。彼らは、社会は、理性的な設計によって、より完璧な、より合理的なものにすることができると信じている。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の人は、政治の活動を、まるで建築の設計図のように、完璧な計画に基づいて社会全体を作り直すプロジェクトだと考えがちです。「人間の理性を使って考えれば、社会はもっと完璧で、もっと理にかなったものになるはずだ!」と信じているのです。オークショットは、このような考え方は、社会は複雑で、何が起こるか分からないものだということを無視していると警告しました。社会は、人間の計画通りに完全にコントロールできるものではないと考えたのです。


65.「理性主義者は、完全な人間を作り直すことを夢見るが、その結果は人間性の破壊である。」(政治における合理主義「バベルの塔」)

解説:オークショットは、理性主義者が、抽象的な理想に基づいて人間や社会を完全に作り変えようとすることを、旧約聖書の「バベルの塔」の物語になぞらえて批判します。理性主義者の試みは、人間の多様性や不完全さを無視し、画一的な人間像を押し付けることで、かえって人間らしさを破壊してしまう結果になると警告しています。人間の本質を見誤った計画は、悲劇を招くという主張です。


66.「政治的理性主義の魅力は、その簡潔さと明瞭さにある。それは、複雑な問題を単純化し、不確実な状況を確実なものに変え、曖昧な目標を明確なものに変えることを約束する。しかし、この魅力は、幻想に過ぎない。政治的現実は、常に複雑で、不確実で、曖昧であり、理性主義的な計画や青写真によって完全に捉えたり、制御したりすることはできない。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の魅力は、その分かりやすさにあります。複雑な問題を単純化して、何が起こるか分からない状況を、まるで確実なことのように見せかけ、曖昧な目標をはっきりとしたものだと約束します。しかし、オークショットは、これはただの幻想だと言います。現実の政治は、いつも複雑で、何が起こるか分からず、曖昧なものです。理性主義的な計画や設計図で、完全に理解したり、コントロールしたりすることはできないのです。政治は、簡単な解決策や普遍的な法則が通用しない、状況に応じた柔軟な対応が必要な分野だと考えられています。


67.「政治的理性主義者は、政治を科学のように捉え、客観的な真理や普遍的な法則を発見できると信じている。しかし、政治は科学とは異なる。政治は、価値観、意見、そして利害が衝突する領域であり、客観的な真理や普遍的な法則が存在するわけではない。政治的知識は、科学的な知識ではなく、むしろ、実践的な知恵、状況判断能力、そして対話と妥協の技術である。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の人は、政治を科学のように扱い、「客観的な真理」や「普遍的な法則」を発見し、それに基づいて社会を設計できると信じています。しかし、オークショットは、政治にこうした理性主義的な「正解」の追求を持ち込むことを批判しました。政治は科学とは異なり、人それぞれの価値観や意見、利害が衝突する領域であり、絶対的な正解は存在しません。政治に必要なのは、科学的な知識ではなく、経験から得た実践的な知恵、状況を読み解く判断力、そして対話と妥協を通じて解決策を見出す技術だと彼は考えます。


68.「功利主義は、人間の行為を計算可能なものに還元するが、それは人間の深みを失わせる。」(政治における合理主義「新しいベンサム」)

解説:オークショットは、ジェレミ・ベンサムに代表される功利主義を批判します。ベンサムは、「最大多数の最大幸福」を原理とし、社会全体の幸福の総量を最大化する行為が善であるとしました。オークショットは、この考え方が人間の行動を「快楽の最大化」という単純な計算式に当てはめてしまうことを問題視します。人間の行動は、快楽や苦痛だけでなく、様々な感情、価値観、習慣などに影響され、数値化できない深みを持つからです。功利主義は、人間を計算機械のように捉え、その多様性を見落とすと指摘します。


69.「政治的理性主義の最大の誤りは、政治を道徳的な問題として捉え、特定の道徳的理想を実現しようとすることである。政治は、道徳的な理想を実現するための手段ではなく、むしろ異なる道徳的価値観を持つ人々が共に生きるための取り決めである。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の大きな間違いは、政治を「何が正しいか」という道徳的な問題として捉え、「こういう社会が正しい!」という特定の理想を実現しようとすることです。オークショットは、政治は道徳的な理想を実現するための道具ではなく、むしろ違う価値観を持っている人々が、お互いを尊重しながら一緒に生きていくためのルール作りだと考えます。


【伝統について】

70.「政治的伝統とは、ルールではなく、むしろ習慣であり、先例であり、やり方である。それは、厳密に公式化されたものではなく、むしろ理解されたものであり、明示的に教え込まれたものではなく、むしろ模倣によって学び取られるものである。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界における伝統は、ガチガチのルールというよりは、「みんなが自然とやっていること(習慣)」や「昔、こういうことがあったから、今回も同じようにしよう(先例)」、「いつもこうやってきたよね(やり方)」といったものです。それは、はっきりと文章で書かれているわけではなく、みんなが何となく理解していることだったり、誰かに教わるというよりは、周りの人の真似をして自然に身につくものだったりします。理性主義が重視するような、明確なルールとは違う、経験を通して受け継がれてきた知恵が伝統なのです。


71.「政治教育とは、技術を教えることではなく、伝統を理解することである。」(政治における合理主義「政治教育」)

解説:オークショットは、政治教育を単なる政策の立案方法や選挙の勝ち方といった技術的な知識を教えることだとは考えません。 むしろ、政治教育とは、その社会が長い時間をかけて培ってきた歴史、文化、慣習といった「伝統」を理解することだと考えます。伝統を理解することで、現在、そして未来の政治について深く考えるための土台が築かれるという主張です。


72.「政治的伝統は、過去の世代から受け継がれた知恵の蓄積である。それは、試行錯誤の歴史であり、成功と失敗の経験であり、世代を超えて蓄積された実践的な知識である。この知恵は、書物や理論の中に明示的に表現されているわけではないが、社会の習慣、制度、そして人々の行動の中に暗黙的に埋め込まれている。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界における伝統は、過去の世代から受け継がれてきた知恵の宝庫です。それは、昔の人たちが色々なことを試して、成功したり失敗したりした経験の積み重ねであり、世代を超えて受け継がれてきた、実際に役立つ知識です。この知恵は、教科書や理論書に書かれているわけではありませんが、社会の習慣やルール、そして人々の行動の中に、当たり前のように存在しています。オークショットは、この「暗黙的に埋め込まれた知恵」を、マイケル・ポランニーが提唱した「暗黙知」(暗黙知)に近い概念として捉えており、理性主義が軽視する伝統の中にこそ、政治の判断や行動の指針となる深い知恵が宿っていると考えました。伝統は、過去からの贈り物であり、私たちが今を生き、未来を作るための大切な資源なのです。


73.「伝統とは、過去の遺物ではなく、現在を生きるための対話である。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:伝統というと、昔の古いもの、もう役に立たないものというイメージがあるかもしれませんが、オークショットはそう考えません。伝統は、過去から現在へと続く、終わりのない「会話」のようなものだと考えます。昔の人の経験や知恵から学び、今の私たちがどう生きるかのヒントにする。それが伝統の役割だと捉えています。


74.「政治的伝統は、過去の遺物を博物館に保存することではなく、むしろ、過去の経験を現在に活かし、未来を創造していくことである。それは、過去との継続的な対話であり、過去から学び、過去を批判的に検討し、過去を乗り越えていくプロセスである。」(政治における合理主義「保守的であるということ」)

解説:政治の世界における伝統は、昔のものをただ博物館に飾っておくだけではありません。むしろ、過去の経験を今の時代に活かし、未来をより良くしていくためのものです。それは、過去の出来事や考え方と絶えず「対話」し、そこから学び、時には批判的に検討し、そして乗り越えていくという、終わりのないプロセスなのです。伝統は、古くて変わらないものではなく、常に変化し、その意味が再解釈されていく、生きたものだと考えられています。


75.「政治的伝統は、過去の遺産を盲目的に受け継ぐことではなく、過去との対話を通じて、現在を理解し、未来を切り開いていくことである。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界における伝統は、昔からのものをただそのまま受け継ぐだけではありません。過去の出来事や先人たちの考え方と「対話」することで、今の社会がどうなっているのかを理解し、これから先の未来をどう作っていくかのヒントを得るためのものです。伝統は、古くて動かないものではなく、常に変化する社会の中で、過去と現在をつなぎ、未来を創造していくための、生きたプロセスなのです。


【歴史について】

76.「歴史家とは、過去の出来事を物語る人ではなく、過去の証拠を解釈する人である。」(政治における合理主義「歴史家の営為」)

解説:オークショットにとって、歴史家は、単に過去に起こったことを順番に並べて話す人ではありません。歴史家は、過去に残された様々な資料(証拠)を注意深く調べ、それが何を意味するのか、なぜそのようなことが起こったのかを考え、説明する(解釈する)人なのです。歴史は、単なる物語ではなく、解釈を通じて過去を理解する営みだと考えています。さらに、オークショットは歴史を「現在の視点から再構成された過去」とも捉えており、単なる事実の羅列ではなく、歴史家の創造的活動によって形作られるものだと強調します。この視点が、彼の歴史観に独特の深みを与えています。


77.「過去は、それ自体では存在せず、現在の問いに対する答えとしてのみ現れる。」(政治における合理主義「歴史家の営為」)

解説:オークショットは、過去は、単なる事実の記録として存在するのではなく、現在の私たちが「何を知りたいか」という問いかけによって、初めて意味を持つようになると考えます。歴史は、現在の視点から再構成されるものであり、歴史家の問いかけが、過去の出来事の中から何を取り上げ、どのように解釈するかを決定づけます。つまり、過去は、現在との対話の中で初めて姿を現すという主張です。


【哲学について】

78.「哲学的探究は、答えを提供するものではなく、問いを明らかにするものである。」(経験とその様態)

解説:オークショットにとって、哲学の役割は、明確な答えを出すことではなく、私たちが普段当たり前だと思っていることに対して、「なぜ?」「どうして?」と問いかけ、問題を明確にすることです。哲学は、答えのない問いを探求し続けることで、私たちの思考を深め、世界をより深く理解するための手がかりを与えてくれると考えます。答えよりも、問いを重視する姿勢を示しています。


79.「哲学の目的は、経験の部分的なものを、全体としての経験の観点から理解することである。」(経験とその様態)

解説: オークショットは、哲学の目的を、私たちが日々経験する様々な出来事や知識(部分的なもの)を、個別のものとして捉えるのではなく、それらをより大きな「経験全体」という視点から理解することだと考えます。目の前の出来事だけでなく、それが過去の経験や他の知識とどのように関連しているのか、そして全体としてどのような意味を持つのかを探求することが、哲学の重要な役割であると彼は主張します。


80.「すべての経験は、哲学的経験の可能性を含んでいる。」(経験とその様態)

解説: オークショットは、私たちの日常的な経験一つ一つの中に、深く考えるきっかけや哲学的な問いが含まれていると考えます。たとえ些細な出来事であっても、「なぜそうなるのだろう?」「これはどういう意味があるのだろう?」と問い直すことで、私たちはその経験をより深く理解し、哲学的な考察へと繋げることができます。つまり、どんな経験も、私たちを哲学的な探求へと導く可能性を秘めていると彼は説いているのです。


81.「哲学とは、経験をその全体性において把握しようとする試みであり、特定の視点や様態に還元されないものである。」(経験とその様態)

解説:オークショットにとって哲学とは、私たちの経験を、科学、歴史、道徳といった特定の分野の視点からだけでなく、あらゆる角度から、できる限り全体的に捉えようとする試みです。一つの考え方や方法に偏ることなく、多様な側面から経験を見つめ、その本質を理解しようとすることが、哲学の役割であると考えます。特定の答えを出すことよりも、探求のプロセス自体を重視する姿勢を示しています。


【知識について】

82.「政治的知識は、技術的な知識と実践的な知識の二つの側面を持つ。技術的な知識は、政治的活動の手段に関する知識であり、実践的な知識は、政治的活動の目的と意味に関する知識である。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界で必要な知識には、二つの側面があります。一つは「技術的な知識」で、これは「どうやって政策を実行するか」といった、政治活動の具体的な方法に関する知識です。もう一つは「実践的な知識」で、これは「なぜその政策を行うのか」「その政策は何を目指しているのか」といった、政治活動の目的や意味に関する知識です。オークショットは、どちらの知識も大切だと考えています。


83.「大学での政治学は、職業訓練ではなく、知的な探求であるべきだ。」(政治における合理主義「大学にふさわしい『政治学』教育について」)

解説:オークショットは、大学における政治学の教育は、政治家や官僚になるための実践的なスキルの訓練ではなく、政治に関する深い知識や思考力を養うための知的探求であるべきだと考えます。具体的な問題解決の方法を学ぶことよりも、政治の本質や歴史、思想について深く考えることを重視する立場です。


84.「政治的理性主義は、政治的知識の技術的な側面のみを重視し、実践的な側面を軽視する傾向がある。しかし、政治的活動の本質は、技術的な問題解決ではなく、むしろ実践的な知恵と判断力の発揮にある。」(政治における合理主義)

解説:政治的理性主義の人は、政治の知識の中でも、具体的な方法に関する「技術的な知識」ばかりを重視して、「なぜそれをするのか」という目的や意味に関する「実践的な知識」を軽んじる傾向があります。しかし、オークショットは、政治の本質は、単に問題を技術的に解決することではなく、状況に応じた知恵や判断力を発揮することにあると考えます。


85.「政治的知識は、抽象的な原理や普遍的な法則を適用することによってではなく、具体的な状況に対する注意深い観察と、過去の経験からの教訓を学ぶことによってのみ、増大する。」(政治における合理主義)

解説:政治の世界で本当に役立つ知識は、「どんな時でも当てはまる」という抽象的なルールを当てはめることで増えるのではありません。目の前にある具体的な状況をよく観察し、過去に同じようなことが起こった時の経験から教訓を学ぶことによってのみ、深まっていくとオークショットは言います。政治の知識は、頭の中で考えた理屈ではなく、実際の経験から得られるものなのです。


86.「知識とは、特定の場所に根ざしたものであり、普遍的なものは知識ではなく幻想である。」(政治における合理主義「バベルの塔」)

解説:オークショットは、知識は、特定の時代、場所、文化といった具体的な文脈の中で意味を持つものであり、そこから切り離された「普遍的な知識」は存在しないと考えます。抽象的でどこにでも当てはまるように見える知識は、現実の世界では役に立たない、空虚な幻想にすぎないと批判します。知識は、常に具体的な状況との関わりの中で捉えられるべきだという主張です。


【経験について】

87.「経験とは、それ自体が完全であり、それを超える現実はない。」(経験とその様態)

解説:オークショットは、私たちが知覚し、思考し、感じる、あらゆる「経験」こそが、唯一の現実であると考えます。経験の外側に、客観的な「真実」や、独立した「世界」を想定しません。私たちの認識や理解は、すべて経験に基づいているのであり、経験こそが、私たちが頼るべき唯一の基盤であるという、徹底した経験主義の立場を表明しています。


88.「真理とは、経験の首尾一貫性である。」(経験とその様態)

解説:オークショットにとって真理とは、どこかにある絶対的なものではなく、私たちの様々な経験が矛盾なく、うまくつながり合っている状態を指します。経験から得た知識や判断が、お互いに矛盾せず、一つのまとまりのあるストーリーを形成している時、それが「真理」であると考えます。真理は、経験全体の中で見出される、調和のとれた状態なのです。


89.「人間の知識は、経験から離れて存在することはなく、経験の中で生まれ、経験の中で成長する。」(経験とその様態)

解説:オークショットは、人間の知識は、頭の中で考え出された抽象的な理論や、生まれつき備わっているものではなく、日々の生活の中での様々な経験を通じて、初めて獲得され、発展していくものだと考えます。知識は、経験という土壌から生まれ、経験によって育てられる植物のようなものです。経験こそが、知識の源泉であり、成長の糧であるという主張です。


90.「経験は、単一のものではなく、多様な様態を持つ。それぞれの様態は、全体の一部として理解されるべきである。」(経験とその様態)

解説:オークショットは、私たちの「経験」は、単一の均質なものではなく、科学、歴史、芸術、日常生活など、様々な種類(様態)を持つと考えます。そして、それぞれの経験は、バラバラに存在するのではなく、互いに関連し合い、より大きな「全体としての経験」の一部を構成していると捉えます。多様な経験が織りなす豊かなタペストリーが、私たちの世界を形作っているのです。


【詩と人間の精神について】

91.「詩は、実用的な目的を持たず、ただ存在することに喜びを見出す。」(政治における合理主義「人類の会話における詩の言葉」)

解説:オークショットは、詩を、何か具体的な目的を達成するための手段ではなく、詩を作ったり読んだりすること自体が喜びをもたらす、純粋な活動だと考えます。実用性や効率性とは無縁の、人間の自由な精神の発露として、詩を高く評価します。詩は、人間の精神が、目的や制約から解放され、自由に遊ぶことの喜びを象徴するものなのです。


92.「幸福とは、目的の達成ではなく、活動そのものの中にある。」(政治における合理主義「人類の会話における詩の言葉」)

解説:オークショットは、幸福を、何か特定の目標を達成した結果として得られるものではなく、日々の活動や行為そのものの中にこそ見出されると考えます。目標に向かって努力する過程や、何かをしている「今、この瞬間」にこそ、幸福の本質があるという主張です。結果よりもプロセスを重視する、オークショットの人生観が表れています。


【文明と自由について】

93.「文明とは、強制ではなく、自発的な参加によって成り立つ。」 (政治における合理主義「政治を語る」)

解説:オークショットは、文明社会は、権力による強制や支配によってではなく、人々が自由な意思で社会活動に参加することによって成り立つと考えます。個人の自律性と自由な選択を尊重し、それが社会全体の秩序と調和を生み出す基盤となると信じます。強制ではなく、自発性が文明を支えるという主張です。


94.「懐疑主義は、無知ではなく、知恵の始まりである。」 (政治における合理主義「政治的言説」)

解説:オークショットは、安易に物事を信じるのではなく、疑い、批判的に考えること(懐疑主義)を重視します。それは、単なる無知や否定ではなく、真実を探求し、より深い理解に到達するための出発点だと考えます。疑うことによって、私たちは思考を深め、知恵を獲得することができるという主張です。


 
 
 

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