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『農地争奪戦:担い手不足の農村に迫りくる太陽光パネルの脅威』

taku181

更新日:1月17日





 失われた共同体、深刻化する担い手不足、そして農地を侵食する太陽光発電設備――崩壊寸前の日本の農村を救うため、百姓、元農業委員、市議会議員の3つの視点を持つ筆者が、行政に対し、現場の現実に根差した対策を求める、切実な現場からの声。日本の農村の未来のために、共に考え、行動しましょう。この記事は、令和5年7月から同年12月までの間、民族派団体一水会の機関紙レコンキスタに寄稿した農業関係記事を再編集したものになります。


1. 失われゆく農村の風景

 日本の原風景とも言える美しい農村が、今まさに存亡の危機に立たされています。毎年、田植えの時期が始まると、田んぼには水が張られ、普段はあまりお会いする機会のない方々とも顔を合わせ、畦道で立ち話に花が咲く、そんな心温まる季節です。しかし、この当たり前の風景が、将来も続く保証はどこにもありません。


2. 農村を支える共同作業と現状

 先人たちが苦労を重ね、整備してきた用水路のおかげで、私たちは毎年田植えを行うことができます。今でも、田植えの前には地域住民総出で水路の泥上げを行い、水の流れを確保していますが、もしこの作業を数年怠れば、水路は土砂で埋まり、田植えができなくなります。

 一枚の田んぼの周りは畦畔で仕切られていますが、基本的に畦畔の向こう側は違う家の田んぼになります。地域の共有財産である農道や畦畔の草刈りの役割分担、地域全体への水の配分、取水の順番や水量の調整など、様々な場面で話し合いと協力が必要となります。

 このように、農村の生活は、お互いが協力し、譲り合ってこそ成り立っているのです。しかし、高齢化の進行と若者の都市部への流出は、この絶妙なバランスの上に成り立つ地域共同体の維持を困難なものにしています。


3. 加速する離農と担い手不足

 近年、高齢化した農家の離農が加速しています。体力の限界だけでなく、高価な農業機械を買い替えることができないという経済的な理由で離農する方も多く、非常にもったいないと感じています。次々と離農する農家に代わって耕作を担ってきたのが、認定農業者や農業法人です。

 しかし、これらの担い手も近年は高齢化が進み、後継者が見つからずに集落全体がお手上げ状態になっているところが少なくありません。農林水産省の統計によると、2000年に約389万人いた農業従事者は、2020年には約136万人にまで減少しています。この数字からも、担い手不足の深刻さがうかがえます。


4. 新規就農者への期待と国の的外れな支援策

 そこで期待されるのが、若手の新規就農者なのですが、国は狂った方針を示しています。地域の農地を守り、人々の胃袋を満たすことよりも、目先の利益を追求させることを最重視しているのです。そのため、新規就農者が国の支援を受けるためには、数年後にこれだけ儲かりますという、現実離れした年次計画の作成が求められます。

 その計画作成をする際には、各県が用意する経営指標という冊子が用いられますが、これは机上の空論で作られた数値です。実際に農業を始めてみると、農産物や肥料、農薬の価格乱高下、周辺の田んぼからの水の流入、天候不順など、想定外の出来事が次々と起こり、たちまち路頭に迷うことになります。


5. 農業の本質と郷土愛

 実際に農業に取り組んでみると、自分一人の力ではどうにもならないことが多く、お天道様や周囲の人々の支えがあってこそ成り立っていることを実感します。だからこそ、農村に住んでいると、困っている人がいたら手を差し伸べ、我田引水ではなく皆で分かち合おうという気持ち、そして在所を愛する気持ちが芽生えてくるのだと思います。


6. 筆者の経験:農家への転身と危機感

 私自身、元々は農家ではありませんでしたが、近所の方から声をかけられ、農業の世界に飛び込んだのが18年前です。既に農村には若者がほとんどおらず、年々、離農される方がでる度に耕作依頼が増えてきました。農業を始めて3年目には、このままの状態では在所の田園風景は近い将来、確実に維持ができなくなると確信しました。

 当時は消防署に勤務しながらの兼業農家で、耕作面積も2町歩ほどしかありませんでした。それでも、非番の日や出勤前に草刈りや水回り(板を調整して田に水をあてる作業)をしながら、どうすれば農村を維持していけるのかを常に考えていました。昭和26年の水害後に作られた用水路は老朽化して水漏れが激しく、他人の田んぼを通らなければ入れないような進入路のない田んぼもあり、中山間地域に比べればまだ良い条件なのだろうと思いますが、田んぼの形も悪く、一枚あたりの面積も狭い状態です。


7. ほ場整備への思いと豪雨災害

 日々、どうしたものかと悩みながら他の地域と比べる中で、田んぼの形を整え、水路も再整備する、ほ場整備事業に取り組む必要があると同時に、若者を呼び込む必要があると考えるに至りました。しかし、当時37歳、農業を始めて間もない若者がいくら訴えても、誰も理解を示してくれません。水利管理団体である土地改良区の理事長に相談しても、「そんなことは無理だ」の一点張り。役場に訴えても、相手にしてもらえない日々が続きました。

 しかし、平成21年に発生した大雨による激甚災害(用水路が越水し地域が洪水になりました)を契機に、やはり雨水排水対策を考えた上での水路の再整備が必要だと感じる方が地域の中で増えてきました。(ちなみに、一般的な地域では、土木関係の部署が所管している雨水を逃がすための排水路と、農業関係の部署が所管している田んぼに水を引くための用水路は別々に整備されています。)


8. 我が地域での圃場整備への取り組みと学び

 そこで我が地域では、平成21年の豪雨災害後から、在所の皆様に対して、まずは圃場整備をして耕作条件を整え、老朽化した用排水路や農道も再整備することを呼びかけてきました。これは、今の時代を生きる我々が力を合わせて、昔、二宮尊徳翁が行ったのと同じことをしようという呼びかけです。

 最初に提案をしてから、これまでの間、実に15年もの歳月を要しましたが、これは私自身の不徳の致すところでもあります。しかし、この件で学んだのは、いくら一人で大声を上げたところで何事も前には進まず、いかに在所の皆様に自分ごととして考え、自発的に動いてもらうかが重要だということです。

 これまでに、整備の完成後に向けて、県外や市外から来てくれた複数名の若手新規就農者に、農地の紹介をしたり、空き家を紹介したりして、住んでもらっているので、当地域においては当面の間、担い手不足で困ることもなさそうです。


9. 農業委員としての活動と不条理な制度との戦い

 平成21年の豪雨災害後、毎年1町歩程度の新たな耕作依頼が寄せられ、消防を中途退職する平成26年には、耕作面積は9町歩ほどになっていました。そして、消防を退職してすぐに、農業委員にならないかというお声がけをいただきました。農業委員とは、市町村に設置され、農地の利用関係の調整や、農地の権利移動に関する許認可等の業務を担う行政委員会です。

 農業委員になってからは、どうやって若者を在所に呼び込むかを考え、空き家と農地をセットで紹介したり、新規就農希望者の相談に乗ったり、研修生を受け入れたりしながら、国の不条理な制度と戦い続けました。例えば、新規就農者に対して国が設けている支援制度は、農林水産省の定めたルールに基づいて運用されています。しかし、この制度を具体的に運用する際には、都道府県の農林担当部署の判断が大きな影響力を持っています。

 特に問題だと感じたのは、いつも平気な顔をして嘘をつく県農林の職員の対応でした。県の職員は嘘だとバレたら首になる場合には、表だっては動かず、市役所の担当職員に説明を代行させます。

 不条理な制度とは書きましたが、日々、担い手として農作業をする傍ら、様々な新規就農の制度の趣旨を捻じ曲げ、若い就農希望達の熱い気持ち、夢や希望を、平気な顔をして土足で踏みにじるような行為をする人たちとも対話をしながら、それでも地域を守るためにと様々な取り組みを進めなければならないのが一番つらい仕事でした。

 現行の国の新規就農支援制度は、全員が全員できる訳のない儲かる農業を目指さないと何の支援も受けられない狂った農政としか言いようがありません。国の定めるルールには、このような内容は全く記されてはいないのですが、無農薬栽培であれば無理だと県農林の職員が勝手に決めつけ本人が担い手になる意思があっても助成を受けさせないといったこともありました。こちらは当時の、国のルールにあったのですが、元々、親が農家である場合に同じ作物を栽培すれば助成を受けさせないという、理不尽な制度の壁もありました。


 こうした中、ある新規就農希望者(Aさんとします)の就農を支援する過程で、特に大きな困難に直面しました。Aさんは4人のお子さんを持つ親御さんで、農機具代金返済がまだだったために多額の借金を残したまま亡くなってしまった父親の跡を引き継ぎ、担い手として一人で頑張っている母親に、つらい思いはさせたくないからと、妻と共に、地域農業の担い手となる強い意欲を持っていました。

 しかし、Aさんの就農計画は、県農林の職員によって、なかなか認められませんでした。この計画認定を得るまでに、何度も何度も手直しを繰り返し、実に1年間もの時間を要しました。わざわざ平日に仕事を休んで、県農林や市役所職員と、計画について話し合う時間を確保する必要があったり、何度も何度も就農計画を書き直す必要があったのに加え、ある程度の面積が確保でき耕作ができる見込みが立ったのにも関わらず、計画の内容を県農林が認めようとしなかったためです。その間、Aさん一家の収入は激減し、ご本人たちには本当に申し訳ない思いをさせてしまいました。

 最終的には、Aさんが親とは別の作物を育て(親は主食用米、Aさんは飼料用米を生産)、販売先を新たに開拓するという内容で就農計画を作り、かなり強引に県農林及び市役所に認めてもらいました。

 このような理不尽な制度や運用を改善するためには、土地利用型と呼ばれる、稲作、麦、大豆などを比較的広い面積で作付けする新規就農者の場合の 国の支援策 については、現行のような収入の目標ではなく、作付け面積の目標を軸にした制度に改めるべきです。Aさんのように、強い意志を持って地域農業の担い手になろうとする若者を支えるためにも、制度の抜本的な見直しが必要なのです。

 ちなみに、就農を支援したAさんのその後ですが、夫婦揃って頑張り屋さんのため、地域の担い手として大活躍してくれており、地元の皆さまにも大変頼りにされ喜ばれています。


10. 若き担い手へのバトンタッチ

 こうした活動の中で、せっかく支援を受け始めることができたのにもかかわらず、残念ながら途中で挫折してしまった人も僅かにはいますが、ほとんどの人は今でも、しっかりと地域の担い手として活躍してくれており、大変嬉しく思っています。

実は、私が議員に当選した直後に立ち上げた農業法人も、一昨年、二人の新規就農の若者に引き継ぎました。今年は二人だけで約14町歩、100枚以上の田植えを終えてくれました。段取りも水管理も全て自分たちで考えてやってくれており、頼もしく思うと同時に、ほ場整備の話も地域の水利団体の皆さまが主導し、令和8年度の国事業採択を目指して進めています。

まだまだ、日本の再独立という夢や、在所の水害対策という課題は残っていますが、しっかりと想いを引き継いでくれる若者がいてくれるので、安心して次の世代にバトンを渡せるのではないかと感じています。


11. 稲作への新規参入の難しさ

 近年の農村では、高価な農業機械を買い替えることができない農家が増え、その代わりに担い手といわれる人たちが農地を預かり耕作をしてきました。しかし、その担い手も高齢化し、後継者のいない家がほとんどです。ある日突然、体調不良や怪我などの理由で「来年からは耕作できない」と告げられ、途方に暮れる地主さんが増えています。

これは、全国どこでも同じですが、今の農村が求めているのは、離農した人の水田を代わりに耕作してくれる若者の存在です。しかし、新規就農で稲作に参入するには高いハードルがあります。

 生活していけるだけの収入が確保しにくいこと、多額の設備投資資金が必要になること、他の地域から来た人は地域との調和がうまくいかない場合があること、地域で信用されないと状態の良い農地を紹介してもらえないこと、親身になってサポートしてくれる人となかなか出会えないことなど、多くの課題があるのです。


12. 新規就農指導の問題点と担い手に求められる役割

 収入確保の難しさについて、行政は稲作をあきらめて、野菜等の他の作物を育てれば良いと指導します。しかし、実際に野菜を栽培してみるとすぐに分かるのですが、周囲に水田がある場合には水が染み込んできたり、雨が降った後の水はけが悪かったりと、簡単には野菜を育てることはできません。もしも、条件の良い(水はけの良い)農地があったとしても、野菜の栽培には稲作の何倍もの労力を要するため、大面積を耕作することは難しく、大面積で稲作をしてくれる担い手を待ち望んでいる地域の皆さまの期待に応えることもできません。

 地域の田園風景を守り、耕作できなくなって困っている人たちを助けるために稲作を行い、さらに大豆、小麦、トウモロコシ等、国内自給率は低いものの経営を成り立たせるのが難しい作物を、一定規模の面積で耕作してくれるような人材は、本来であれば公務員として雇用するべきです。しかし、そのように訴えてくれる国会議員には、残念ながら出会ったことがありません。


13. 解決策としての「第三者継承」

 穀物生産を国防の一つと位置づけ、政府が積極財政の路線に転換すればすぐに解決する問題なのですが、なかなか理想とする農政に転換することが見込めない中、現場では様々な工夫を凝らしています。

 その一つが、新規就農の若者が設備投資のために多額の借金を背負わなくても良いように、ある程度の規模で耕作している高齢の農家さんが所有している倉庫や農業機械、借りている農地や販売先などを、離農される際にそのままの状態で若者に引き継ぐ「第三者継承」です。

 この方法であれば、高齢となった担い手が離農する2~3年前から、継承を希望する若者に対して技術指導や地域との調和の取り方などを指導することができ、まだ圃場整備が行われていない地域の場合でも、この若者に、ある程度の面積をカバーできる力量があると判断すれば、次は、圃場整備事業の推進役に加わってもらうことで地域としての道が拓け、将来にわたって農地を守り続けることが可能になるでしょう。

 既に行政に誘導されるがまま野菜のビニールハウスを建てたり設備を整えるために多額の借金を背負い、そのハウスの中に缶詰にされながら野菜の生産を行ってはいるが、経営に行き詰まってしまった新規就農者でも、水稲の田植えや収穫の時期に、後継者のいない大規模稲作農家のアルバイトでお手伝いをすることで、第三者継承への道が開けてくる可能性があります。

 高齢の担い手が何とか踏ん張ってくださっている今ならまだ間に合いますが、完全に離農してしまってからでは何も引き継ぐことができなくなるので、早急な対応が必要です。田植えと稲刈りの時期だけであれば、大した日数ではないので、その程度のアルバイト代は行政が予算を確保して捻出すれば良いと思います。


14. 食料自給率向上の難しさと圃場整備の重要性

 なぜ我が国のカロリー自給率は低いのに、わずか17%しかない小麦や、26%しかない食用大豆の作付面積を増やすことができないのでしょうか。これらの作物は商品単価が安いため、政府は補助金を出して作付けを促しています。小麦や大豆だけでなく、家畜の餌になる飼料用米についても同じような仕組みです。

 しかし、以前もお伝えしたように、条件不利地での畑作は難しく、収穫時に圃場に勝手に水が入ってくるような農地では、小麦の作付けは困難です。大豆についても、収穫時に汎用コンバインという高価な農機や、乾燥機、選別機、色彩選別機などが必要になるため、ほ場整理が完了した集落営農組織や大規模法人が存在するような地域でしか作付けは行われていません。


15. 圃場整備後の新たな問題:県の小麦増産抑制と財務省の圧力

 ところが、ほ場整備の話が進みだし安心したのも束の間、新たな問題が発生してしまいました。一つ目は、小麦の需給調整が各県単位に委ねられており、販売力に乏しい当県では、これ以上生産を増やしてはいけないという、全く理解に苦しむ指導が県からなされているのです。需給調整は政府の責任において、国全体で行わなければ、カロリー自給率が上がるはずもありません。

 二つ目は、財務省が圃場整備で莫大な補助金を使った上に、さらに完成後に補助金割合の高い小麦や大豆、飼料用米の生産面積を増やすことは許さないと、農水省に圧力をかけていることです。ウクライナ情勢の緊迫化やグローバルサウスの台頭、中国の爆買いなど、穀物の輸入が不安定になっているにもかかわらず、彼らの頭の中は未だに緊縮財政、つまり前時代的な金本位制や貨幣プール論のままなのです。


16. 財務省の巧妙なやり口への批判

 財務省側のやり口は巧妙です。財政制度等審議会等の諮問機関に、息のかかった御用学者や民間のレントシーカーを送り込み、あらゆる省庁の無駄を省けと代弁させています。当然、何らかの見返りがあると考えるのが妥当でしょう。

 米国政府高官がウクライナへの武器支援の見返りに、退職後にいわゆる「回転ドア」で軍需産業に就職し、多額の報酬を得る行為のミニチュア版が、日本においても行われていると考えた方が良さそうです。このような非倫理的な行為が、先進各国において当たり前のように行われる時代からは、そろそろ卒業すべきではないでしょうか。


17. 失われた共同体の現状と「寄り合い」の重要性

 近年の農政は、中小規模の農家を切り捨て、大規模農家だけを生き残らせるように政策誘導をしてきたと言えます。しかし、農村にある非効率な農地や畦畔、用排水路の泥上げ、ため池の管理などは、経営を維持するために最大限効率化された大規模農家の人員だけでは管理できるはずもなく、在所の皆様の協力が不可欠です。

 ある程度、兼業農家が残っていた昭和の後期までは、定期的に農家が集まり、様々なことを決めていく「寄り合い」が残っていました。その集まりごとに長老もおられ、好き勝手なことを言う人がいても、最終的には公の観点から皆がまとまれるように導いてくださっていたと聞いています。


18. 農水省の地域を守るための支援制度(続き)

 しかし現在では、このように地域農業の将来について話し合う場が失われてしまった地域がほとんどです。大規模農家に農地の管理を委ねた人の中には、在所の将来を自分ごととして考えることができないような人が徐々に増えてきたように感じています。

 そうなると、在所の水路や農道は管理が行き届かなくなりますが、農水省としても可能な限り、皆が協力して守り続けるための活動ができるような予算を確保しています。

 具体的には、多面的機能支払交付金や、中山間地域等直接支払交付金といった取り組みになりますが、これらは他の県にお住まいの皆様にも、どんどん活用していただきたい制度です。

 多面的機能支払交付金は、地域の共同活動を支援することで、農地や水路、農道などの地域資源の保全、質的向上を図る制度です。例えば、水路の草刈りや泥上げ、農道の路面維持、植栽による景観形成といった活動に対して、国から交付金が支払われます。

 また中山間地域等直接支払交付金は、平野部に比べて傾斜地が多く耕作放棄地が増えやすい中山間地域の農業生産活動を維持するために、農地の面積に応じて一定額を交付する制度です。平地では10aあたり8,000円、急傾斜地(田んぼの場合で1/20以上の勾配がある農地)では10aあたり21,000円の交付金を受け取ることができます。中山間地域で農業を営む方々にとっては、大変ありがたい制度です。

 これらの制度は、非農家の方々にも参加してもらい、水路掃除や農道等の共有地の草刈り作業をしたりすることができます。また、水路や農道の補修工事等にも活用でき、農林水産省の事業の中では失われつつある在所の共同体を守るという意味において、最も素晴らしい事業だと考えています。


19. 共同体再生への活動と「地域計画」

 しかし、この素晴らしい事業にも、財務省が様々な横やりを入れてきており、年々使いにくい制度内容に改悪されています。これらの事業は、失われた在所の共同体を回復させるためにあると考えていますので、今よりもさらに使途の範囲を広げ、在所の共同体を守る目的で活用するのであれば、どんな用途にも使えるようにすべきです。

 我が地域においても、私が新規就農をした17年前には、皆さんが集まる「寄り合い」は既に失われていました。しかし、この事業の存在を知り、地域の人々に呼び掛け、受け皿となる組織を立ち上げたことにより、将来どのようにして在所の農地や周辺環境を維持していくのかという話し合いが定期的に行えるようになりました。

 その中で、もっと多くの若手農業者を呼び込む必要があることや、劣化した水路や農道を整備して不整形な農地を整形する圃場整備事業に取り組まない限り、在所の環境を守り続けることはできないという共通認識を、在所の皆様と一緒に共有することができるようになったと考えています。

 ようやく農水省も、全国全ての農地を誰がどのように守っていくのかを、それぞれの地域で農業者や関連団体、行政等を含めた皆で話し合い、それを「地域計画」としてまとめるように方針を示しました。しかし、この動きが一過性で終わることなく、最低でも2~3ヶ月ごとに一回は皆で集まる機会を作り、将来について話し合っていくことが重要です。地域住民の中には、非農家であっても農業に興味のある方もおられますので、広く皆様に呼びかけて、話し合いに参加してもらうのが良いでしょう。


20. 農地転用の現状:これ以上、農地に太陽光パネルを置かないで

 高齢化で耕作できなくなった農地が、東京や大阪などにある太陽光発電の会社に売られ、次々と転用されています。農地転用のための許可申請は農業委員会に出されますが、法律上、原則として転用を拒むことができないために、いくら隣地の耕作者が反対しても許可されてしまいます。

 農地はエリアごとに1種、2種、3種の3つに分類されており、1種は生産性の高い集団的農地区域内の農地であり、原則、農地転用は認められていません。2種は土地改良事業の対象となっていない小集団の生産性の低い農地で、3種農地を利用できない場合には農地転用が許可されます。3種は既に市街化が進んでいる区域の農地で、原則、農地転用の許可は不要です。


21. 都会の資産家たちによる農地収奪の実態

 農地の所有者には、東京や大阪にあるソーラー発電の会社から、「農地を売りませんか」という営業のダイレクトメールが頻繁に届きます。また、これらの会社の営業マンが自宅まで戸別訪問に来ることもあります。

 これまでは主に、法的要件を満たしていれば簡単に許可のでる2種農地の所有者を対象に営業がなされ、都会の会社が農地を購入した後に太陽光パネルを設置し、完成後は、都会に住んでいる資産家に投資案件として土地と太陽光設備を丸ごと売却するというパターンで、農地が食い荒らされてきました。

 地元に住んだこともない都会の資産家が農村の土地を所有してしまうことで、これまで地域住民によって管理されていた用排水路の泥上げも、畦畔の草刈りもされずに放置状態となり、隣の農地所有者からは役場に何度もクレームが入ります。役場が注意をしても改善されない場合には、役場担当者から隣の広島県にある資源エネルギー庁の出先に連絡し、FIT制度(固定価格買取制度)での買い取りを停止すると警告してもらって、ようやく重い腰を上げるということを、これまでに何度も見てきました。


22. 営農型太陽光発電の闇

 このように生産性の低い2種農地の転用だけでも農村の秩序が乱れるため大問題なのですが、最近では1種農地の所有者にも「営農型発電をしたいので、農地を売りませんか」という営業が来るようになりました。国の規制緩和により、1種農地でも太陽光パネルの下で農作物を育てるという条件であれば、支柱の部分だけを農地転用することで、太陽光発電事業を行うことができてしまうのです。

 しかも、営業チラシにはパネルの下で食料自給率には何ら寄与しない榊を植える計画だと書いてあります。なるべく手の掛からない作物を植え、「一応、農業をしています」という体裁を整えたいのでしょう。

 そもそも、営農型発電で優良な1種農地の転用が認められるようになった理由は、利益を出しにくい農家が、自然からいただく恵みの副産物として売電収入を得て、しっかりと自立した農業経営を行うためという目的だったはずです。

 当然ではありますが、このように他県の会社が金儲けのために、「一応農業をしています」という体裁だけを整えながら、売電収入という美味しい部分だけを奪っていく行為を許すわけにはいきません。この太陽光発電目的での無秩序な農地転用によって起こる農村のさらなる衰退を防ぐためには、行政機関とも一緒になって早急に対策を講じる必要があります。


23. 地方自治体による太陽光パネル対策:条例制定の動き

 太陽光発電目的の無秩序な農地転用や、森林の乱開発を防止するための方策として、既にいくつかの自治体では独自の条例を制定し、市長の許可制にしています。そして、許可の要件として、隣接土地所有者の同意を求めたり、地元自治会や水利関係団体等との協定書の締結を義務付けたり、設置後も毎年の維持管理報告を義務付けるなどして、地域トラブルが起こりにくいような工夫がなされています。

 昨年末に、宮城県が森林の環境を保全し、地域との軋轢を防ぐために、森林開発を伴う太陽光発電事業者に課税する条例を全国で初めて制定しましたが、これは非常に素晴らしい動きであり、他の都道府県も後に続いてほしいと願っています。

 私が住む山口県防府市においても市議会が主導し、来年6月議会での可決を目指して条例化に向けた話し合いを、全ての会派に参加してもらう形で行っています。しかし、今後、条例化できていない自治体については、太陽光発電事業者の格好の標的となることが予想されることから、早急な対策が求められます。


24. 危機感の増大:農地買いますテレビCMと圃場整備への悪影響

 前述のように、生産性の高い1種農地の所有者にも営農型太陽光発電の営業が来るようになっていますが、最近ではテレビで「活用していない農地を売りませんか」というCMも流れるようになり、いよいよ本当に取り返しのつかないことになるのではないかと強い危機感を抱いています。

 昭和20~30年代に引かれた水路や農道等の老朽化したインフラが、自治体の財政難を理由にそのままの状態で、ほとんどメンテナンスもされずに劣化し続けており、未だに圃場整備が完了していないような集団農地で、営農型太陽光発電設備を設置されてしまうと、全員の同意を必要とする国の圃場整備事業に取り組むことができなくなり、劣化した水路等のインフラの再整備も永遠にできなくなってしまいます。

 一刻の猶予もありません。今すぐに対策を講じなければ、日本の農村は失われてしまうでしょう。


25. 農地転用阻止への提言:法改正と条例制定

 農地所有者の権利は極めて強く、現行法では太陽光業者に農地を売却することを止めることはできません。しかし、国レベルでの法改正を行い、農業委員会に強い権限を与えたり、各自治体で条例を制定するなどして、何とか農地転用を阻止していくべきです。

 農地は地域共同体の共有財産であり、国民の食料を生産するためにあると私は考えています。

 そもそも、個人の思い付きで農地を営利企業や、少しでも高く買ってくれる人に簡単に売ってしまうことができること自体が大問題であり、本来であれば耕作できる見込みがなくなった農地から順番に公有化していくべきではないでしょうか。


26. 農地公有化の必要性と現実的な課題

 法務省は、相続土地国庫帰属制度という、管理できない土地を手放せる制度を作りました。しかし、1反(1,000㎡)の農地を国に返すのに114万円もの費用が必要となるため、現実的な制度とは到底言えません。

 農地は国民の食料を生産する場なのですから、本来は国が無償で引き取るべきです。最近では毎年のように近所の農家さんから「農地を手放したいので買ってくれ」と頼まれるようになっています。しかし、次々と頼まれても個人が買い支えるのには限界がありますし、だからといって、営利や転売目的の太陽光発電事業者が農地を次々と購入し、地域の調和を乱されても困ります。


27. 結論:農地国有化と政治の役割

 全ての農地を国有地にすれば、いつも農家に自己責任論を押し付けてくる極めて無責任な我が国の政府でも、本気で農政のことを考えるようになるでしょう。農家が日の出から日没まで、一生懸命に汗水流して働けば、普通に暮らしていけるような世の中を作ることこそが、政治の本来の役割なのです。

 これは単なる農業だけの問題ではなく、国家のあり方そのものを問う問題です。日本の美しい農村と、そこに暮らす人々の営みを守るために、今こそ、国、自治体、地域住民が一体となって、真剣に議論し、行動を起こさなければなりません。

 私たち一人ひとりが、この問題を「自分ごと」として捉え、未来の世代に豊かな農村を引き継ぐために、できることから始めていくことが求められています。


6カ月分の記事を1つの記事に纏めるのにAIを活用しました。文責:石田たくなり


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